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ドイツの観光地と言えば皆さん何を思い浮かべるでしょうか。ノイシュヴァンシュタイン城、ロマンティック街道、ミュンヘン、ライン川…自然に恵まれ、且つ激動の時代を経てきたドイツ。その分見どころも多く世界遺産の数も日本の倍近くあるというから驚きですよね。しかし今挙げたこれらの観光地はすべて南ドイツにある人気観光地。では北ドイツは魅力が薄いのかと言われれば全くそんなことはありません。
今回は敢えて北ドイツに焦点を絞ってこの国の更なる魅力についてご紹介していければと思います。
再統一された首都ベルリン
ドイツの首都であり人口350万人以上を抱える大都市ベルリン。1961年に壁が築かれ、以来28年間ドイツという国を東西に分断していたことは皆さんも知るところでしょう。そして1989年、そのベルリンの壁が崩壊するという歴史的大事件が起こりました。残念ながら私はベルリンの壁が破壊された時まだ生まれていなかったため、当時の感動や衝撃は推し量ることしかできません。そんな歴史を経てきたベルリンは今では発展を遂げ、ヨーロッパ経済の中心として躍進している都市なのです。
東京23区の約1.5倍の広さを誇るベルリンは、東西分裂の歴史もあり見どころが多い街の一つです。他のドイツの街と比べても特に大きいので、ベルリン観光をするなら少なくとも丸二日は時間をとっておきましょう。ベルリンのシンボルであるブランデンブルク門や世界遺産の「博物館の島」、ベルリン大聖堂などなど見るべきポイントがたくさん。
もしベルリンの壁の歴史を辿ってみたいなら、ドイツで唯一壁がそのまま残っているイーストサイドギャラリーや壁博物館を訪問してみるといいでしょう。ベルリンのこうした苦難の時代を知れば、きっとこの街がより魅力的に映ること間違いなしです。
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百塔の都ドレスデン
かつては「百塔の都」と称され、繁栄を続けていたドレスデン。エルベ川に佇むこの街は、16世紀にはザクセン王国の首都として多くのバロック様式の宮殿や教会が建ち並ぶエリアだったのだと言います。しかしそれも第二次世界大戦の空襲で一夜にして瓦礫の山と化します。現在の姿は20世紀に建て直された新しい街並み。東西ドイツ統一後見事復興を遂げたドレスデンは、かつての美しい街並みを取り戻したのです。
ドレスデンの見どころはいくつかありますが、やはりレジデンツ宮殿はこの街を語る上で欠かせません。ザクセン王の居城であるこの宮殿は、現在はザクセン王家の財宝やコレクションが並ぶ宝物館や博物館となっています。エルベ川の対岸から見た、川にかかる橋とレジデンツ宮殿の姿はまるで絵はがきのように美しい光景。ザクセン周辺には「ザクセンのスイス」やマイセンの工場などもあるので合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
ザクセンのスイス
ドレスデンから更に東に行った先にある一風変わった岩山。平地の多いドイツでは珍しくゴツゴツとした断崖絶壁がいくつも連なるこの地帯は「ザクセンのスイス」と呼ばれ、観光客を惹きつけてやまない人気スポットとなっています。
まるで地面からニョキニョキと生えてきたかのようなこの奇岩群は、実は長い年月をかけ自然の力によって浸食された結果。谷底から空に向かって貫くようにして伸びる岩山は高さ100mにもなり、その光景は圧巻です。特に「バスタイブリュッケ」と呼ばれるアーチが連なる橋からの眺めが最高。目の前にそびえ立つ岩肌は白亜紀からのもので、自然の雄大さを感じるのには十分でしょう。ドイツの東部にある国境付近のスポットなので、この場所から隣国のチェコを見渡すことも可能。
「ザクセンのスイス」と呼ばれていますが、どちらかと言うとベトナムのハロン湾や中国の武陵源のような荒々しく力強い雰囲気。それでいてどこか神秘的にすら感じる風景は一見の価値ありです。
憧れの陶器の町マイセン
ドレスデンの郊外にある町マイセン。中世の面影が残る歴史あるこの町は、ヨーロッパでも指折りの高級磁器マイセン焼きのふるさとです。ぶらりと町を散策するのも良いですが、せっかくマイセンまで来たのならそんなマイセン焼きのすべてが分かるマイセン磁器工場に足を延ばしてみましょう。
工場と言っても実際には博物館と工房に分かれた建物で、マイセンの歴史やその制作過程などを見学することが出来ます。そもそも何故マイセンが高級磁器と言われているのかというと、職人の腕を頼りにした製法を昔からずっと守り続けているからに他ならないでしょう。これだけ世界的に有名になった今でも造形と絵付けはすべて手作業。マイセン食器の代表的な図柄である玉ねぎ模様など、伝統的な青で彩られた磁器は繊細の一言です。一つ一つ丁寧に入れられていく様子も間近で見学可能。太さの異なる筆を巧みに使い分けて真っ白な磁器に息が吹き込まれていく様子に、きっと見入ってしまうはず。
もちろんショップも併設されているので、せっかくなら記念に1セット買ってみるのもいいでしょう。マイセンの食器は空港などでも売られていますがこの磁器工場が最も品揃えがいいのでオススメです。
バッハゆかりの学芸の町 ライプチヒ(ライプツィヒ)
「音楽の都」と聞くとオーストリアのウィーンを思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかしドイツにあるここライプチヒも、バッハの聖地として知られる音楽の街です。47年という彼の音楽人生の中で、実に半分近くの時間をこの街で過ごしたのだと言います。
特にトーマス教会はもっともバッハとゆかりのある場所と言っても過言ではありません。
実はライプチヒで暮らしていたバッハはこのトーマス教会の音楽監督を務め、実際に幾度となく演奏を行っていたのだとか。彼が当時使っていたオルガンは今でもこの場所に残されており、週末になるとオルガンコンサートが開催されます。
また教会内のステンドグラスにバッハが描かれていたり、主祭壇の前にはバッハのお墓まで。バッハのファンなら是非とも足を運んでみてはいかがでしょうか。他にもバッハ博物館や、数々の名曲が演奏されてきたケヴァントハウスというコンサートホール、ニコライ教会なども目が離せません。
魔女伝説の町ゴスラー
木組みの建物が並ぶ街、ゴスラー。ドイツと言えば歴史ある美しい建物が多いですが、その中でもこの街は異質な存在でしょう。
実はここゴスラーがあるハルツ山地のブロッケン山には魔女伝説があります。毎年4月30日から5月1日にかけて、魔女たちが冬の終わりを悪魔たちと祝うためここゴスラーに集まるのだとか。そのためゴスラーは「魔女の街」として親しまれ、そんな伝説にあやかって街中には年中魔女の人形などがそこかしこに飾られているのです。
街中のお土産物屋さんに魔女グッズが売られているのは勿論のこと、2階の窓から魔女人形がつるされていたり、オシャレなブティックやレストランにも大きな魔女人形が!これだけ街が一体になって魔女一色に染め上げているのはとてもユニーク。なんだかテーマパークに迷い込んだかのようで楽しい気分にさせられること間違いなしです。
また歴史的な建築物が集まるマルクト広場など、魔女を抜きにしても美しい街並みが広がるゴスラーは散策をするのに最適です。ドイツにはこういった小さな町がいくつもありますが、その中でもゴスラーは私が特にイチオシしたい町なのです。
「北ドイツの真珠」ツェレ
「北ドイツの真珠」と呼ばれるほど華やかで美しい街並みが広がるツェレ。ドイツらしい木組みの家が建ち並びますが、他と圧倒的に違うのはその色の美しさにあります。
正直に言って私はドイツの街の見分けはほとんどつきません。というのも大抵どこも似たような色と形でパターン化されており、よほど特徴的でもない限り判別するのが困難なのです。しかしツェレは他のドイツの都市と比べて非常に鮮やか。ピンクや黄色、青に緑など様々な色で塗られた街はまるで童話の世界のようです。
ツェレは第二次世界大戦で被害が出なかった街。そのため15世紀から今日までずっと変わらずに残っている建物が500軒以上あるのだといいます。まるで色とりどりの積み木でつくったかのような家々は、どこから撮っても絵になる美しさ。
クリスマスには石畳が敷き詰められたグローサー広場にこの時期限定のクリスマスマーケットも開催。可愛らしく装飾された屋台がずらりと広場を埋めるのです。異国情緒満点のこの街で過ごすクリスマスを一度体験してみてはいかがでしょうか。
絵本の中のような歴史の町リューネブルク
リューネブルクは1000年も昔から製塩業で栄えた街。塩で莫大な富を得るなんて島国の日本ではあまり考えられないことですが、北部しか海に面していないドイツでは当時塩は貴重な存在でした。
そんなリューネブルクの街並みは北ドイツらしい赤レンガ造り。しかしその形は建てられた時代によって様々で、バラエティに富んだ景色を見せてくれるのがこの街の魅力でしょう。13世紀に建てられた当時とてもシンプルだった市庁舎は、塩の利益により一変。様々な建築様式を取り入れた壮大な建物となったのです。
リューネブルクの街並みは北ドイツで最も美しいとさえ言われていますが、その秘密が製塩業で得た潤沢な資金にあったとは…。実はこの街を訪れた際1人の男性が声をかけてきました。「この街はドイツで指折りの美しい街ですよ」なるほど、たしかにその言葉は本当だと実感したのでした。
ハンザ同盟の中心リューベック
13世紀から17世紀の間、北海・バルト海貿易を独占していたハンザ同盟。ハンザとはドイツ語で「組合」や「団体」を意味する言葉。簡単に言ってしまえば、力を持っている都市同士で手を組んでWin-Winの取引をしましょうという同盟です。
それがこのリューベックと何の関係があるのかというと、実はそのハンザ同盟の中心として名を馳せていた都市こそがここリューベックなのです。貿易で多大な利益を得ていたこの街。そのためかリューベックでは他とは違った街並みを見ることが出来ます。
北ドイツと言えば先述した通り赤いレンガでつくられた建物が多いですが、ここではリューベック特有の黒レンガを使用して建てられた重厚な建物が並びます。そしてユニークなのが市庁舎のつくり。建物の上部に丸い穴が開いたそれは、なんと風が多いこの街ならではのアイディア。穴を開けておくことで敢えて風の通り道をつくり、建物が壊れるのを防いでいるのだとか。
またケーキなどに乗っているマジパンもリューベックで生まれたもの。是非街を散策したあとは一休みにカフェに入ってみましょう。美味しいコーヒーと本場のマジパンケーキを味わうのもリューベック観光の楽しみです。
活気あふれるドイツ最大の港町ハンブルグ
港湾都市として発展してきたハンブルグ。ヨーロッパ有数の商業の中心地であり、ベルリンに次いでドイツ第2の都市として知られます。世界遺産に指定されている倉庫街は赤いレンガ造りが特徴的で、その規模は世界最大。運河に面し、19世紀の空気感が漂うこの倉庫街はどこかロマンティックな雰囲気さえあります。倉庫内にはミニチュアワンダーランドと呼ばれる、同じく世界最大級の鉄道のジオラマがあり、ハンブルグ観光の人気スポットとなっているのです。
ハンブルグは戦争により古い街並みはほとんど残っていませんが、倉庫街をはじめ市庁舎やミヒャエル教会などではその面影を感じ取ることが出来ます。特に1886年から10年以上の歳月を費やして建てられたネオ・ルネッサンス様式の市庁舎が素晴らしく、その荘厳さはまるで宮殿のよう。なんと部屋数は647を超え、バッキンガム宮殿よりも多いのだとか。市庁舎にそこまで部屋必要なのかというツッコミは置いておいて、外観だけでなく内装の重厚さも超必見。市庁舎を眺めながら運河の近くでお茶を楽しむのも良いでしょう。