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エジプトの南、エチオピアの北に位置するスーダンは、地中海エリア及びアラブ世界とアフリカを結ぶ十字路として栄えた国です。一般的には内戦で怖いイメージがありますが、南スーダン独立後治安は改善されつつあります。2つのナイル河(青ナイルと白ナイル)が合流する首都ハルツームをはじめ、バユダ及びヌビア砂漠が広がる北部スーダンの古代文明の遺跡群など観光の見所も沢山あります。本稿ではスーダン旅行におすすめの観光ポイントをご紹介します。
荒涼砂漠に潜むファラオの墳墓クッル遺跡
クッル遺跡はクシュ王国のナパタ文化期(紀元前8世紀~5世紀)の墳墓遺跡で、エジプトを征服したピアンキ王の王墓と言われるピラミッドを始め、王族の墓を含む34基もの墳墓が残されています。そのうち前室、玄室の壁画が保存され見学できるのはタヌトアモン王とその母親カルハタ王妃の墳墓のみです。ピラミッドこそほとんど形を残していませんが、ユネスコにより保護され、内部の壁画は色がきれいに残っています。古代エジプトのピラミッド同様にアヌビス、オシリス、聖なる船や神々の絵が描かれ、再生への祈りが表現されています。
またクッル遺跡の近くにある化石の森も必見です。化石の森とは、古代期に起きた火山の爆発により森が灰で覆われ、それが化石となって地表に出てきたエリアのこと。なんとそれが3キロ四方に広がっており、この地にいかに深い森が広がっていたのか窺えます。また、山から出た雨水が岩山を削ってナイル河へ流れたことによりできた渓谷も一見の価値があります。
砂漠にそびえる聖なる山ジュベル・バルカル
ジュベル・バルカルは、スーダン北部にある高さがわずか98mの小山ですが、エジプト王朝新王国時代には、アモン神の聖地とされ、ヌビア最大の聖地として定められた場所です。2013年に「ジュベル・バルカルとナパタ地方の遺跡群」として世界遺産に登録されています。
麓にはバルカル・ピラミッドや紀元前13世紀頃からクシュ・ナパタ王国時代まで使用されたとされるアモン神殿などがあり、ハトホルの石柱や羊のスフィンクス、レリーフ等が残されています。ジェベル・バルカルの頂上から見る夕日の美しさは格別で、眼下には緑豊かなナイル河や神殿・宮殿、遥か続くヌビア砂漠の地平線、遠くにはヌリのピラミッド群も見ることができます。
北部スーダン古代文明の宝庫メロエの遺跡群
メロエは、紀元前8世紀から紀元4世紀に栄えたクシュ王国の都市遺跡です。クシュ王国は、元々エジプト王国の都市ナパタから生まれた国。メロエに遷都した後、一時エジプトまで支配していたこともあり、メロエの砂漠にはエジプトとそっくりなピラミッドが多数残されています。
一つ一つのピラミッドは大きくありませんが、砂漠に埋もれるように残された、スーダン特有のシャープなピラミッド群は訪れるものを魅了します。ピラミッドに残されたレリーフや内部の壁画も一見の価値ありです。ピラミッド以外にも神殿、住居などの建造物の他、大規模な水利施設跡も残されており、地中海からアフリカ大陸の中央部まで広がった王国の壮大さを感じることができます。
2人の王様が造ったナカ&ムサワラット遺跡
ナカ遺跡とムサワラッタ遺跡は共に古代クシュ・メロエ王国時代の遺跡で、世界遺産に登録されています。ナカは紀元前250年代ナカマタニ王により建設され、キオスク(神殿に付随するローマ風の建物)、アペデマーク神殿、アモン神殿の3つの主要な建物が残されています。壁面に彫られたヌビアの土着神でライオンの頭を持つアペデマーク神やエジプトの神々、クシュの王族のレリーフ(ナクタアマニ王、アマニシャヒド女王等)は必見です。
ムサワラットはアビダマニ王が造った神殿で、ワニとジオス神のレリーフが描かれています。また珍しい象のレリーフが描かれ、象も王の象徴の動物と考えられていたことと、ムサワラッタで象に乗って狩りを行っていたため、珍重した表れであると考えられています。
迷路のようなスークとハルツーム新市街
スーダンの首都ハルツームは、ハルツーム(新市街)、北ハルツーム、オムドゥルマン(旧市街)の3つのエリアで構成されていますが、見所が集中しているのがオムドゥルマンです。オムドゥルマンの最大の見所はスークです。モスクを目印に日用雑貨・寝具・自転車・玩具・革製品などなど、販売品ごとに通りが異なり、広範囲に広がる様はまるで迷路の様です。
又、スーダン独立の英雄で宗教指導者のマハディの墓(モスク)やイギリス人が来襲した際に作られた泥の防御壁も一見の価値ありです。一方、新市街には各地の遺跡出土品を収蔵した国立博物館やエスニック・グループ博物館など多くの見所があります。
白ナイルと青ナイルの合流地点(ナイル川)
首都ハルツームにあるナイル川の合流地点は必見です。ナイル川は、ウガンダのヴィクトリア湖の方面から流れてくる白ナイル川と、エチオピアから流れてくる青ナイル川があり、ハルツームで合流します。合流地点ではその名の通り白く濁った白ナイルと青く濁った青ナイルを見ることができます。
合流地点はオムドゥルマンと北ハルツームを結ぶ橋の上から見ることもできますが、折角なら合流地点まで見学に行くミニクルーズ(雨季の水位が高い時期限定)がおすすめです。実際合流地点に行くと、色の違いから二つの川がぶつかり合っている様子がはっきりとわかります。ハルツームで合流したナイルはそのままエジプトへ流れ、世界最長の川となります。
ハマデルニールモスクでのダービッシュ・セレモニー
スーダンに来たら金曜日はハマデルニールモスクに是非行ってみてください。ハマデルニールモスクは19世紀のスーフィズム(イスラム教神秘主義)の聖者ハマデルニールの霊廟(モスク)で、そこでは金曜の礼拝日に緑色の法衣を着たダルビッシュ達(イスラム神秘主義の修行僧)の旋回舞踊「ダービッシュ・セレモニー」が見られるからです。金曜日の夕方5時ごろになるとモスク前の外の広場に信者が集まります。
霊廟に向かう行列から信者たちは輪になって「ラーイラーハ・イッラッラー(アッラー以外に神はなし)」と合掌します。輪の中では宗教指導者が旋回して舞い、信者の気分を高揚させていきます。モスクの前で民族衣装に身を包んだ信者たちが音楽にあわせてくるくると旋回する様は圧巻です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。スーダンはアフリカの中でもなかなか情報が少ない場所ですが、魅力が伝わり少しでも身近な存在になれば幸いです。歴史とロマンとホスピタリティーに溢れたスーダンを是非旅先の候補に入れてみてはいかがでしょうか。