目次
現在の首都ワルシャワを東京に例えるならクラクフは京都と言えるでしょう。中世の佇まいをそのまま残し、歴史の重みを感じるままに旧市街散歩を楽しみましょう。重厚で華麗な雰囲気に圧倒されるヴァヴェル城、旧市街のどまんなか、中央広場を綺麗に飾られた馬車が聖マリア教会や旧市庁舎前を通る様は、まるで精巧に造られた映画のワンシーンを観ているようです。クラクフ近郊にはナチスドイツのアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所、また、地下宮殿のような巨大なヴィエリチカ岩塩坑に日帰り観光が可能です。
正式国名 | ポーランド共和国 ポーランド語ではポルスカ(Polska) |
概略 | 16から17世紀にかけてポーランド・リトアニア共和国としてヨーロッパ有数の大国となるがその後他国により分割され一時消滅。 第一次世界大戦後に一旦独立を回復するも第二次世界大戦時に再び分割。戦後、一党独裁のポーランド人民共和国として独立。 1989年に初めて行われた自由選挙により現在のポーランド共和国に |
首都 | ワルシャワ |
面積 | 32.2万平方キロメートル。ドイツよりやや小さく日本の約5分の4。九州と四国を除いた程度 |
人口 | 約3,827万人(2020年末:ポーランド中央統計局) |
通貨 | ズウォティ |
宗教 | カトリック(人口の約88%) |
民族構成 | ポーランド人(人口の約97%) |
言語 | ポーランド語 |
アクセス | ポーランドのフラッグキャリアであるLOTポーランド航空が首都ワルシャワまでの直行便を運行している。 「LOT」はポーランド語で「Flight」の意味をもつ。 |
絶対行くべきアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所
名称 | アウシュビッツ博物館・ビルケナウ収容所 |
住所 | Wiezniow Oswiecimia 20 Oswiecim |
電話 | +48-33-844-8100 |
営業時間 | 4・5・9月07:30~18:00、6~8月07:30~19:00、3・10月07:30~17:00、 1・11月07:30~15:00、12月07:30~14:00、2月07:30~16:00 |
休館日 | 1/1、イースター、12/25 |
入場料 | 無料 但し、各月指定時間が設けられ必ずガイド付きで観光。その場合は別途ガイド料金が必要 |
アクセス | クラクフ本駅のバスターミナルから1時間に1~2本程度定期バスが運行 |
公式サイト | http://auschwitz.org/en/more/japanese/ (日本語版) |
備考 | 公共バスを利用する場合混雑状況により立ち席になることがある |
クラクフにあるアウシュビッツ博物館は、あまりの悲惨さに目を覆ったり頭を抱えたり、心が躍らない気持ちになるかもしれませんが、二度と繰り返してはならない人類の負の遺産に触れられる貴重な体験ができる場です。 もしもその当時自分がその場にいたらと想像するとあまりの恐怖に立ちすくむことでしょう。 私たちはこれまで、アウシュビッツの歴史に幾度となく触れてきました。 アンネの日記を小学校で学び、その後は、ドラマや映画などで断続的に接し続けています。 「ホロコースト」、「戦場のピアニスト」、「シンドラーのリスト」、「ソフィーの選択」など、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所をテーマにしたドラマや映画が多数制作されました。 日本でも命をテーマにした小説「白い巨塔」が著されたように世界中に関連する文献が残されています。
実は、アウシュビッツはドイツ人が名付けた地名で、元々はオシフィエンチムと呼ばれる小さな村でした。第二次世界大戦中、ナチスドイツは、そのオシフィエンチムにアウシュビッツ収容所とそこからわずか2キロ程離れた場所にビルケナウ収容所を建設しました。アウシュビッツ収容所は当時の様子がほぼそのまま残されており、収容所の入り口に『ARBEIT MACHT FREI』(働けば自由になる)という文字が掲げられたゲートが有名です。この場所全体がアウシュビッツ博物館として公開され各月の指定時間は各国語のガイドが内部を案内してくれます。(有料)
一方、ビルケナウ収容所はさらに規模が大きく広大な敷地の中に造られました。敷地内に鉄道の引込み線がくぐる『死の門』がこの収容所の象徴となっています。
両収容所間は無料送迎バスを使って移動できます。
アウシュビッツ博物館とビルケナウ収容所をセットにした専用車を利用するプライベートツアーはじめガイドさんと一緒に公共バスを利用するお安めのツアーもあり様々な方法で見学することができます。クラクフ市内からオシフィエンチムまで車で片道約90分。両収容所を見学するには3時間半から4時間は要するでしょう。
世界で初めて登録された世界遺産の中のひとつ・ヴィエリチカ岩塩坑
名称 | ヴィエリチカ岩塩坑 |
住所 | Danitowicza 10 Wieliczka |
電話 | +48-12-278-7302 |
営業時間 | 4~10月07:30~19:30、11~3月08:00~17:00 |
休館日 | 1/1、イースター、11/1、12/24・25 |
入場料 | 大人87pln、26歳までの学生・65歳以上の高齢者77pln、中学生以下69pln、家族(大人2名4~16歳の小人2名)243pln |
アクセス | クラクフ本駅から1時間に1~2本、所要時間約40分。駅からは徒歩で約5分。バスは1時間に1~5本、所要時間約40~60分 |
公式サイト | http://www.kopalnia.pl (日本語サイト有) |
備考 | 1年を通して多くの観光客が訪れ夏のピークシーズンは1~2時間待つこともある |
ヴィエリチカ岩塩坑は、1978年に世界で初めて登録された12か所の世界遺産の中のひとつで同じクラクフの旧市街と共に認定されました。
かつて白い金と呼ばれ巨富をもたらした岩塩の採掘場がクラクフ郊外にあります。そこには100%塩で造られた地下礼拝堂があり今でも日曜日にミサが行われます。300mもの深さ、2000か所以上もの採掘場が残され、まるで地下宮殿のようでもあります。名もない坑夫が彫り上げたという岩塩彫刻も多数残され古代遺跡と勘違いしてしまうほどの芸術的な価値も見出すことができます。
見学できるルートは極一部ではあるものの見応え十分な地底の旅となるでしょう。岩塩坑内部の観光はガイド付きツアーでのみ見学できます。所要時間約3時間。入場券は当日窓口かホームページからオンライン購入も可能です。
クラクフの繁栄ぶりがうかがえるヴァヴェル城内の旧王宮と博物館
名称 | 旧王宮 |
住所 | Wawel 5 |
電話 | +48-12-422-5155 |
営業時間 | 旧王宮内の各種博物館や展示室によって公開時間が異なる。詳細はホームぺージ参照 |
休館日 | 11~3月の月曜日。ヴァヴェル城及び城内のヴァヴェル大聖堂は無休。 但し大聖堂美術館は日曜休館。詳細はホームぺージ参照 |
入場料 | 旧王宮内の各種博物館や展示室によって異なる。詳細はホームぺージ参照 ヴァヴェル城への入場は無料 |
アクセス | クラクフ本駅から旧市街入り口のフロリアンスカ門まで徒歩で約7~8分。 そのまま旧市街を南に15~20分ほど歩くと嫌でも巨大な赤い城壁が見えてきます。そこがヴァヴェル城です。 |
公式サイト | http://www.wawel.krakow.pl (日本語サイト有) |
備考 | 夏のピークは旧王宮の各種博物館の入場券が午前中で売り切れることも朝一番から行動開始しましょう。 ヴァヴェル城内は散歩するだけでも楽しいところです。お城からのヴィスワ川の眺めも必見 |
歴代のポーランド王の居城として知られるヴァヴェル城の主な見どころのひとつに旧王宮と博物館があります。博物館と言ってもいくつもの博物館・展示室に別れていてそれぞれ入場券が必要です。16~17世紀の王宮を再現した豪華な王族の部屋や王様はじめ王家の肖像画などが見られるほか、フランドル地方(現在のベルギー)で作られた100枚以上にも及ぶタペストリーは必見です。時期によっては世界的に有名な画家の作品が展示されることもあるのでホームページで事前チェックしましょう。
第二次世界大戦の戦禍をまぬがれた幸運な城です。何世紀にも渡り増改築を繰り返してきたため、ロマネスク様式、ゴシック様式、ルネッサンス様式といった、その時代の様々な建築様式が混ざった興味深い建造物となっています。内部は個人で見学することもできますが、ガイドツアーでのみ入場できる部屋もあるのでガイドツアーに申し込むのもよいでしょう。(有料)プラハやウィーンと並び文化の中心として栄えたかつてのポーランド王国の首都クラクフの生き生きとした繁栄ぶりを見ることができます。
古都クラクフの黄金時代を肌で感じるヴァヴェル大聖堂
名称 | ヴァヴェル大聖堂 |
住所 | Wawel 5 |
電話 | +48-12-429-9516 |
営業時間 | 4~10月9:00~17:00(日曜のみ12:30~17:00) 11~3月9:00~16:00(日曜のみ12:30~16:00) |
休館日 | 大聖堂は無休。但し大聖堂美術館は日曜休館。 |
入場料 | 大聖堂だけなら無料。博物館は大人14pln、小人8pln |
アクセス | クラクフ本駅から旧市街入り口のフロリアンスカ門まで徒歩で約7~8分。 そのまま旧市街を南に15~20分ほど歩くと嫌でも巨大な赤い城壁が見えてきます。そこがヴァヴェル城です。 |
公式サイト | http://www.katedra-wawelska.pl (日本語サイト有) |
備考 | 大聖堂だけなら入場料は不要 |
およそ550年間に渡りポーランド王国の首都として栄えたクラクフは古都として今もポーランド国民に親しまれています。中でもヴァヴェル大聖堂は、クラクフ最大の見どころで14世紀以降約400年にも渡り歴代ポーランド国王の戴冠式が執り行われた場所です。夜はライトアップされクラクフの夜をひときわ輝かせ、昼は太陽の光で黄金色のドームが照り輝く荘厳な姿はポーランド絶頂期の象徴です。
ほとんどのポーランド国王の戴冠式が行われた場所であり、国王はじめポーランドの英雄として認められた人々の墓所でもあるためポーランド国民にとって特別な教会となっています。また、ジグムントチャペルは「ルネッサンス様式の最高傑作」と称され、その美しさに誰しも圧倒されます。内部装飾もさることながら黄金ドームの外観が素晴らしく、ジグムントの塔にはポーランド最大の鐘がつるされています。
国王が保護したユダヤ人街・ガジミエシュ地区
名称 | ガジミエシュ地区 |
アクセス | クラクフ本駅から3番のトラムに乗りMidowa通りで下車し徒歩5分ほどで到着。 すべて徒歩だと旧市街を通り抜け約40~50分かかるが町歩きをしながら歩くのがお奨め |
備考 | 14世紀初頭ガジミエシュ大王が造ったユダヤ人街は今ではポーランドきってのおしゃれな町として生まれ変わりました。 |
約600年に渡りユダヤ人街として大いに栄えたガジミエシュ地区は今や個性的なカフェやレストラン、プチホテルがあるおしゃれな街として変貌を遂げています。観光の途中に立ち寄りたいお店がいっぱい。この町が造られたきっかけは14世紀初めころにクラクフとは別の街としてポーランド国王のガジミエシュ大王の手で開発が進められ、遠くの他の地域で迫害されていたユダヤ人も保護したために多くのユダヤ人が移住してさらに発展することとなりました。
ガジミエシュ地区観光のハイライトのひとつは美しく優しい繊細な装飾に彩られたシナゴーグ巡りです。ポーランド最古のユダヤ教神殿・スタラシナゴーグは今ではユダヤ博物館としてユダヤ文化の発信地の役割を果たしています。他に、華やかな装飾が美しい「テンペル・シナゴーク」、映画『シンドラーのリスト』のロケ地となったイザークシナゴーグなど多くのシナゴーグが点在しています。学校の課外授業も頻繁に行われていて真剣に学ぶ学生たちにも出会うことでしょう。イザークシナゴーグ以外にも映画『シンドラーのリスト』のロケ地が点在していて映画ファン必見のエリアでもあります。また、ナチスドイツのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)にまつわる史跡がありユダヤ人の歴史に触れることができます。
重厚なゴシック様式の聖マリア教会と中央広場
名称 | 聖マリア教会 |
住所 | Rynek Gtow 5 |
電話 | +48-12-422-0737 |
営業時間 | 11:30~17:45(日曜のみ14:00~17:45) |
休館日 | 無休 |
入場料 | 大人10pln、小人5pln |
アクセス | クラクフ本駅から旧市街入り口のフロリアンスカ門まで徒歩で約7~8分。 そのまま旧市街を南にしばらく行くと中央広場に到着。進行方向左手の高い塔 |
公式サイト | http://www.mariacki.com (英語) |
備考 | 教会の塔に登る場合は別料金。曜日によりクローズする時期があるので注意 |
聖マリア教会は、世界最大級の規模とファイト・シュートースが設計した芸術的な祭壇を見るために多くの観光客が訪れます。祭壇は毎日11:50に修道女によって開けられますのでその瞬間を目撃できるように入場されることをおすすめします。また、1時間毎にラッパが吹き鳴らされますが、最後まで演奏されることはなく必ず中断します。それは敵の襲来を知らせるラッパ吹きの兵隊が敵の矢によって殺されてしまったことに由来し、演奏が途中で中断された時の一瞬の静寂さを体験するために見物客が集まるのです。
さらに、塔の上部から中央広場を見下ろす景色も必見で、東京ドームのグランドの3つ分もある広場に、綺麗に着飾った御者が操るたくさんの馬車、中世そのままの旧市庁舎の塔、織物会館などを一望できます。
旧市街の砦・バルバカンと城壁・フロリアンスカ門
名称 | バルバカンとフロリアンスカ門 |
住所 | ul. Basztowa |
電話 | +48-12-422-9877 |
営業時間 | 10:30~18:00 |
休館日 | 11~3月の第二月曜日 |
入場料 | 大人12pln、小人8pln |
アクセス | クラクフ本駅から旧市街入り口のフロリアンスカ門まで徒歩で約7~8分 |
備考 | バルバカンとフロリアンスカ門は共通のチケットで入場できる。旧市街への入り口の門はいつでも開いていて無料で通れます。 |
かつての城壁・フロリアンスカ門からの敵の来襲を防ぐために造られた円形の砦がバルバカンです。ヨーロッパに現存する砦は3つしかなくたいへん貴重な建造物になります。因みに同じポーランドのワルシャワに、再建されたものが残っています。城壁は19世紀に取り壊されてしまいましたが、フロリアンスカ門は当時の雰囲気を感じさせてくれます。
フロリアンスカ門から旧市街へと続く道がメインストリートのフロリアンスカ通りで、おしゃれなカフェやレストラン、ショップが並んでいます。フロリアンスカ門のすぐ右手にはポーランド最古のチャルトリスキ美術館があります。2019年12月にリニューアルされ、作品は21の部屋に分類され展示されています。有名どころの美術作品も多く展示されているので興味のある方は必見です。
まとめ
クラクフの町はとても落ち着いていて中世の古都の雰囲気をたっぷりと味わえます。旧市街は歩いてまわるのに丁度よい広さではありますが、さらに南のガジミエシュ地区やクラクフ現代美術館、シンドラーの工場の方まで行くとさすがに疲れます。ほとんどがクラクフ本駅を通るトラムなので運転手さんに確認してに乗ってしまいましょう。アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所とヴィエリチカ岩塩坑を1日で観光することは困難なので可能であればクラクフには3泊したいところです。