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インドには見る者を圧倒する建築物がたくさんあります。それはエリアによってもまちまち。 今回訪れた南インド・タミルナードゥ州ではドラヴィダ人が築き上げたドラヴィア建築の寺院の数々に驚き、魅了された私。 南インドでは9世紀から13世紀にわたって栄えたチョーラ朝時代の11世紀から12世紀にかけて、ヒンドゥー教寺院である大寺院建築が生み出されました。これらは「大チョーラ朝寺院群」として世界遺産に指定されています。その3つの寺院を訪れ、魅力を探りました。 その後、南インドならではのドラヴィダ建築の寺院を巡り、地元の信者に愛されるスピリチュアルなヒンズー寺院にも潜入。さて、どんな寺院に足を踏み入れたのでしょうか?
世界遺産の3つの寺院 大チョーラ朝寺院群を制覇
南インドにおける権力を示すため、11から12世紀にかけてチョーラ王朝が建立に力を入れたヒンズー教寺院群。その3つが「大チョーラ朝寺院群」として世界遺産に指定された、素晴らしいドラヴィダ建築の寺院群なのでした。 その3つとは王朝の首都タンジャーヴールにある最初の世界遺産に指定されたプリハディーシュワラ寺院。ガイガイコンダチョーラプラムにある同じ名前のプリハディーシュワラ寺院。そしてダーラースラムにあるアイラヴァテシュワラ寺院。
どれもが目を瞠る素晴らしい建築揃いです。まさにドラヴィダ建築の最高峰であり、世界遺産の名にふさわしい寺院群です。 ではその3つの寺院を一つずつご紹介いたしましょう!
世界遺産その1 プリハディーシュワラ寺院。愛称ビッグテンプル
3つの世界遺産の親分的存在は、最初に世界遺産に指定されたプリハディーシュワラ寺院。東南アジアの寺院のモデルとなったインド宗教建築の模範と言われています。シヴァ神を祀るヒンドゥー寺院の中で最大規模の寺院です。 遠くから運んできて積み上げた御影石の寺院は高さ63mもあって、中は空洞で上にピラミッド状の4トンもの重い屋根があるというかなりユニークな造りでした。
敷地は広くて、シヴァ神の乗り物とされる神聖なナンディー(聖牛)の像もあって、この大きさも最大級の像とされ、そこでも参拝できます。 寺院の下の方にシヴァ神参拝の列ができていて、ここにはパワーが最強のジュピター神も祀られているということで人気が高いようです。私もパワースポットと聞いてさっそく列に並び、石の階段を昇っていきました。 本堂に着くと僧侶にお布施を払います。ビンディの白い粉をおでこに付けてくれ拝んでいると、僧侶が「ハッピーライフ!」と祝福してくれたのでした。なんか幸せな気分!!
施設名 | プリハディーシュワラ寺院/Brihadeeswara Temple |
住所 | Balaganapathy Nagar, Thanjavur, Thanjavur, Tamil Nadu 613007 |
その2 ダーラースラムのアイラヴァテシュワラ寺院
クンバコーナム近郊、第2の世界遺産はこの寺院。12世紀半ばに建てられた、ここもシヴァ神を祀る寺院です。外壁の中に点在する遺跡はモニュメントであり、信仰の場というより観光客が多い遺跡という感じ。以前行ったハンピの遺跡を思い出しました。 印象的なのは寺院が山車の形をしていて、象や馬が車輪を引いている彫刻もあるのです。
柱が林立する回廊に沿って歩くのもムード満点です。階段を上って本堂の入口の方に入っていくと、林立する柱の並ぶ風景が、本当に絵になる寺院です。 精緻な彫刻の数々、その完成度は高く評価されています。
施設名 | アイラヴァテシュワラ寺院/Dharasuram Sri Airavatesvara Temple |
住所 | Airavatesvara Temple,Dharasuram, Kumbakonam,Tamil Nadu 612702 |
その3 ガンガイコンダチョーラプラムのプリハディーシュワラ寺院
1番目に紹介した寺院と同名なので、寺院のあるこの地、ガンガイコンダチョーラプラムの名で呼ばれています。クンバコーナムの北、郊外に位置しています。 11世紀に建てられた壮大な寺院は芝生や緑の木々、ヤシの木もあって絵になる建造物です。チョーラ朝時代の最高傑作とも呼ばれるほど人気があるのです。
世界遺産かつ最高傑作と呼ばれるため、たくさんの観光客が訪れています。私が出会ったのはインド各地からきている家族や、課外授業や遠足で訪れている子供たちの団体です。ハローと声をかけると、皆がハローハローと集まって来てもう大変です。 日本人が珍しいようで、一緒に写真を撮ってくれー!とどんどんファミリーや子供が列をなしてくるのですっかり人気者になった気分。日本では味わえない体験の思い出は今も写真とともに残っています。でもガイドさんには「時間が無くなるので写真はその辺にしてください」と止められたほどでした(笑)
施設名 | Brihadeeswara Temple |
住所 | Balaganapathy Nagar, Thanjavur, Thanjavur, Tamil Nadu 613007 インド |
スリヤナー・コイル寺院 九星ナヴァラトナ参拝の太陽の寺のスピリチュアルなパワースポット
人間の運命に影響を与えると言われる9つの惑星は、占星術を信じるヒンズー教徒にとって重要な存在です。地上の平和と安寧、生命体の幸福を司っている9つの惑星の神々は、通常は寺院の片隅で一緒に祀られています。 でもシヴァ神は南インドの聖地クンバコーナム付近に、9つの惑星の神々を祀る寺院を別々に建てるよう命じたのです。日(太陽)の寺、木星の寺、金星のお寺・・というように。これらの9つの惑星は九星(ナヴァラトナ)と呼ばれます。インドでは九星を祀る寺を巡礼することを熱望する人が多いのです。 ヒンズー教徒にとって最強のパワーを持つと言われるスーリヤを祀った聖なる寺院がクンバコーナム近郊にある太陽の寺であるスリヤナー・コイル寺院です。この寺院の奥深くまで潜入することに成功しました!! 規模は小さいけれど地元の信者に愛される聖なる寺院で、スピリチュアルな世界が広がっていました。本堂に入る前に参道の露店でお供え物の籠を100ルピーで購入。中にはココヤシやバナナや花々が入っています。
お店の男性が籠を持って本堂の奥までずっと案内してくれました。チップ目当てにしても、お陰でなかなか見られない本堂の奥も見学とお参りができました。 本堂内ではhommaオマと呼ぶ火の儀式が行われていました。日本でいうごま木を炊いて僧侶が儀式をするのです。火の中には特別のスパイスや穀物を入れていき、その煙を浴びてエネルギーを与えてもらうのだそうです。 本堂の奥での参拝の方法も教えてくれました。籠の中のココナッツは割ってくれ名前を言ってお供えしたら、僧侶が祈りながらおでこにビンディを付けてくれます。そして名前を呼んで祈ってくれました。すごいパワーをもらえたはず!!今回の寺院巡りの中で一番印象に残った場所でした。
施設名 | スリヤナー・コイル寺院/Suryanar Kovil |
住所 | Thanjavur D.T, P.O, Thirumangalagudi, Tamil Nadu 612102 |
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カーンチプラム チェンナイ郊外の寺院
チェンナイ市内から南西へ77㎞に位置する古都カーンチプラム。1時間半で行けるはずが、道が渋滞して2時間以上かかりました。 まずは8世紀初頭に建造されたカーンチプラムで最も古いカイナーサナータル寺院へ。回廊に沿って50以上の小さな祠堂が林立している様子は圧巻でした。 柱の1本1本に浮彫のライオン像が立体的に彫られているのも感動的です。カーンチプラムに行くなら見逃せないシーンです。
16世紀から17世紀に建造された高さ50m以上あるという塔門(ゴープラム)はあいにく修復中で、見ることができませんでした。その建築様式はもちろんドラヴィダ建築のヒンドゥー寺院ならではのデザインです。中に入ると、カーンチプラム最大のシヴァ神の寺院らしく、千の柱の寺と呼ばれるそうで、本堂を囲むように136ものリンガが飾られています。中央に古いマンゴの大木が茂っているのも特徴的。 本堂へは外国人は入れないとかで、ガイドが粘ったら、500ルピー払わされて入ることができました。
施設名 | カイナーサナータル寺院/Kailasanathar Temple |
住所 | Kailasanathar Temple,Kanchipuram,Tamil Nadu 631501 |
マハバリプラムは海辺の寺院
チェンナイ市内から南へ60㎞ほど。ベンガル湾に面した海沿いに位置するマハバリプラム。7世紀ごろ、東西交易で栄えたこの地には貴重な遺跡がいくつも残されています。 まず訪れたのが海岸寺院と呼ばれる海辺の小さな寺院です。2004年の大津波でかなり崩壊して、残されたのが寺院一つの大小セットのみ。規模はかなり小さくなってしまいました。そして、海風に当たり表面がすり減ってどこか寂し気な風情の寺院でした。
その代わり、マハバリプラムにはほかにユニークな見どころがありました。「クリシュナのバターボール」です。クリシュナ神が大好きなバターボールのような形の岩が、坂の途中に止まったままびくともしないそうです。象に引かせても動かないとか。岩の下に入って記念写真を撮るのもいいけれど、急に動いたら怖い?! もう一つの見どころは「アルジュナの苦行」と呼ばれる巨大な岩に彫られたレリーフ。象やシヴァ神などヒンドゥー教の神々が見事に彫られています。世界でも指折りの大きさを誇るレリーフなのです。
施設名 | マハバリプラム/Mahabalipuram |
住所 | Mahabalipuram,Chengalpattu District,Tamil Nadu 603104 |
マドライ ミナクシ寺院
マドライの町にある16世紀に建造されたミナクシ・アンマン寺院。ミナクシとはシヴァ神の奥さんのことで「魚の目を持つ女神」と呼ばれています。 寺院の塔門(ゴープラム)は4つ。私が行ったときはあいにくどれもが修復工事中で、外に木組が付いていました。残念。辛うじて上の方だけ見える塔門があって、そこだけ写真が撮れました。
この寺院は中に入ってもカメラ、スマホすべて持ち込み不可。写真は外からのみしか許可されません。しかもヒンドゥー教以外の異教徒は中に入れないという制限までありました。私たちにとっては条件が厳しい寺院なのでした。 塔門に彫られた無数のレリーフはヒンドゥー教の神々です。よくぞこれほど密集した細かい像を掘ったものだと感心しました。
施設名 | ミナクシ寺院/Meenakshi Temple |
住所 | Meenakshi Amman Temple,Madurai Main,Madurai, Tamil Nadu 625001 |
クンバコーナムの寺院群
クンバコーナムエリアで必見の寺院の一つがクンベーシュワラ寺院。エリア最大のシヴァ神の寺院です。本堂の前に、飾りを付けた象が出迎えてくれます。チップを渡せば花で頭をとんとんして祝福してくれるそうです。 見ていると足をトントコして元気いっぱいなので、力任せに鼻で頭を叩かれたら怖いので辞めておいた。本当は優しい象さんなのかもしれないけれど・・・・ 外観がまた工事中で見えません。内部はろうそくを灯して祈りを捧げる人々がいて柱と天井の色彩鮮やかな装飾は見ごたえ十分。大きな黒いナンディー(聖牛)の像も。
もう一つのお薦め寺院はビシュヌ神を祀る由緒のあるサーランガパニ寺院です。45メートルもある巨大な東の塔門が目の前にそびえて圧巻です。カラフルな彫刻が一面にびっしり。レリーフを眺めていると、中にはコミカルなものや、カジュラホのようなエロティックなシーンも描かれていました。 ここは中の方まで入って見ることができました。
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寺院巡りで気を付けること
ヒンドゥー教の寺院を訪れるときの注意点をいくつかご紹介いたします。 まずお寺に入るときは必ず靴を脱ぐので、できれば最初からスリッパやビーチサンダルなどを履いていくのがおすすめ。スニーカーなどは面倒だし、適当に置いておくので高級な靴は盗られないか心配になるからおすすめできない。靴下を履いていた方が痛くない場合もあるけれど、履くなら汚れて捨ててもいいようなものにした方が無難。 カメラは持ち込み禁止のところもあり、持ち込み可能でも持ち込み料金を取られることもあり、スマホの方が安心です。祈りの場所や本堂内は写真不可のところが多いので、ガイドさんに相談しましょう。
寺院は12:30から16:00は祈りの時間として、外からの観光客の出入りはできないようにクローズすることが多いので、参拝目的ならその時間は避けるように計画するのがベター。 外からは見られても、中に入れないことも多いようです。また、もともとヒンドゥー教徒以外は入れない寺院もあります。 ちょっと高級なお供え物を買うと、お店の人が一緒に内部へ案内してくれることもあって楽しいです。(たまたまかもしれませんが) どこへ行っても日本人は珍しがられて人気の的。子供が集まって来ていい写真が撮れるチャンスも多い。でもそれで時間を取りすぎると、ツアーのスケジュールに支障をきたすこともあるので注意が必要。
まとめ
南インド、ドラヴィダ建築の寺院巡りの旅いかがでしたか? 世界遺産に指定されている大チョーラ朝寺院群3つの迫力溢れる建築物もさることながら、地元の信者に愛される小さなスピリチュアルな寺院も必見です。パワースポットに行ってみたい方にもお薦めです。 独特な華やかさと神秘性を兼ね備えたドラヴィダ建築の魅力を味わいに、次は南インドへ足を延ばしてみては?
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