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アフリカでサファリをする時、私が最も重視することのひとつが、「サファリカーの少なさ」に他なりません。なぜならライオンやチーターなどの肉食獣がいくら多くとも、サファリカーが押しかけて1匹のライオンを取り囲むようなサファリはNGです。
その点、サファリカーが少なくて、スケールが大きく手つかずの大自然と野生動物を独り占めできるような場所でのサファリは理想的です。そんな穴場中の穴場といえるのがタンザニアの南西部にあるカタヴィ国立公園なのです。
なにしろ拠点となる都市アルーシャからカタヴィに国内線で飛ぶには、数か所廻っていくフライトで4-5時間もかかる辺境の地にあるのです。タンザニアの他の国立公園に比べてサファリ客も少なく、サファリ中に他のサファリカーに出会うことすら稀なほどです。
ところがこの国立公園には驚くほど動物がたくさんいて、ライオンやヒョウ、ハイエナに象などが普通に見られる超ホームラン級のサファリが楽しめるのです。そして最も特徴的なのが驚くべき数のカバの存在。そう、カタヴィはカバの楽園なのです。
カバの王国カタヴィの動物たち
日中のカバは本当に怠惰です。朝のサファリで日が差してくる頃、カバは皆水の中にいます。ヒポプールと呼ばれるカバの溜まり場には、泥水の中でひたすら居眠りするカバたちがまるで「佃煮」状態です。時々プハーッと口を開けたり目をキョロキョロさせたりしています。
しかしながら夜行性のカバたちは、夜中には一晩に80㎞も移動することがあり、精力的に餌を探し回るというのです。全速力で走ると時速48㎞と図体に似合わず意外に俊足なのです。
午後に昼寝から起き出した彼らは水から出て陸地へ上がり草を食べ始めます。水の中にいるカバは普通でも、陸地を歩き回るカバの姿を見られるのは稀なこと。
それがここカタヴィでは、一度に何十頭ものカバが群れをなし陸地で歩き回っている姿を目撃できるのです。カバの多さは驚くほどで、世界的にもユニークな場所だと言えるでしょう。
私がカタヴィを訪れたのは10月上旬のこと。まだ乾季の終わり頃とあって、広々としたサバンナもカラカラに乾燥していて、川もほとんどが干上がっていました。だから水のある場所には動物たちが自然に集まってきます。カバの群れの近くの水辺で水を飲むライオンや、シマウマにイボイノシシ。たくさんの鳥もいます。水辺には緑の木々も瑞々しく、まさにカバの楽園と呼べそうな光景に魅了されたのでした。チーターとサイはほとんどいないようですが、インパラ、ブッシュバックにリードバック、トピ、バッファロー、マングースなどなどたくさんの動物に出会いました。木の上にいる美しいヒョウも何度か見かけたのです。
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カタヴィのナチュラルで素敵なロッジにて
果てしなく続くサバンナを見渡せるブッシュの中に点在する、超ナチュラルなテントロッジ。私が滞在した「チャダ カタヴィCHADA KATAVI」は美しい鳥が飛び交い、ベルベットモンキーが遊びに来るチャーミングなロッジでした。ブッシュには時々象のファミリーもやって来て、ダイニングテントで食事中すぐ目の前を象が通り過ぎるということもあって、最初はびっくりしたものです。
旅慣れたセレブな欧米人ゲストが多いので、ロッジのスタッフのサービスもしっかりしています。食事も良くあるボリューミーな肉たっぷりのロッジとは一線を画したヘルシーで味わい深いシンプルな野菜中心のメニューが好評で、私もとても気に入りました。
ナチュラル感いっぱいのテント内は、ゆったりしたスペースと高めの天井のおかげで閉塞感もなく居心地抜群。テラスのテーブルには、スタッフが早朝に紅茶やコーヒーを運んできてくれます。午後もサバンナを見渡しながらのひと時を過ごします。網戸になっていて暑い日中も、心地よいそよ風が吹き込んできます。
トイレと洗面所のテントは隣接していて、ジッパーを開けて出入りします。もう一つ外に露天のシャワールームがあります。時間と人数を指定すれば、スタッフがバケツでお湯を運んできて外から流し込んでくれる、いわゆるバケットシャワーです。青空と木々の緑を見上げつつ、昼間に屋外で浴びるホットシャワーは格別、自然を肌で感じるひと時です。あまりゆっくり浴びていると、途中でお湯がおしまいになるので要注意ですが。
午後のサファリの後にも残ったぬるま湯のシャワーを浴びた私。でもある時発見したのです。上に設置されているバケツの残った水を飲みにサルがやってくるのを。サルが身体を浸けたり飲んだりしていた水を私は知らずに浴びていたのでした・・・・トホホ・・・シャワーの水は一度に使い切るのが鉄則でした。
チャダ カタヴィのゲストの話
ロッジでの食事はダイニングテントの大きなテーブルで、ゲストが一同に会して取るやりかたです。自然皆さんとの会話が弾みます。
70台のご夫婦はニューヨークから来られたドクターとエアフォースでナースとして働いていたという奥様。アフリカには35回も来ているとかで、年に2回、2週間から4週間のバカンスはファーストクラスで最高のロッジに泊まり歩いているそうです。ありとあらゆるアフリカのサファリスポットを制覇してきたとのこと。情報収集にはうってつけです。奥さんのジェリーさんは若々しく知的で会話もうまい女性。バケットシャワー中にモンキーが遊びに来ていたと楽し気に皆に話します。・・・・・ところでサルの浴びた水でモンキーシャワーしても大丈夫でしょうかね?私が質問すると、「・・・・それは微妙ね。・・・・絶対OKではないかも」・・・・そこで一同大笑いとなったのです。
ジョージア州から来ていたメアリーさんご夫妻。いつも陽気で賑やかな、ぽっちゃりふくよかなメアリーさんと、優しげな旦那さん。カタヴィに来る前にはンゴロンゴロに行ってきたとか。この後はセルー国立公園へ向かうそうです。
デンマークから来ていたファミリーはウガンダとルワンダでゴリラトレッキングをしてからカタヴィへ来たそうです。このあとマハレというタンザニアのチンパンジートレッキングのできるスポットへ向かうそうです。
さすがに皆さん、それぞれにこだわりのサファリ通ぞろい。こんな出会いがあるのも、辺境にあっても素晴らしいこだわりのロッジに泊まる醍醐味といえるのです。
カタヴィの1日
カタヴィ国立公園はケニアのマサイマラ動物保護区の3倍の広さがあるため、サファリのエリアも広範囲にわたっています。そのためサファリの時間は長めに設定されているのです。チャダ カタヴィの1日のスケジュールはこんな感じでした。
05:30 モーニングノック。電話などないのでスタッフが起こしに来て、声をかけてくれる。ノックといっても壁はないです。(笑)そして同時に紅茶やコーヒーとクッキーを箱に入れて運んできてくれます。ベランダにおいてもサルに狙われないよう鍵のかかる箱入りです。
06:30 ゲームドライブ(サファリのこと)に出発。11:30までたっぷり5時間ほど走ります。サファリをした後、08:30~09:00頃ブッシュブレックファストを用意してくれます。メニューはソフトドリンクと紅茶コーヒー、サンドイッチ(目玉焼きとベーコンだった)ソーセージ、シリアル、フルーツなど、テーブルと椅子も用意してくれてサバンナを眺めながらの楽しいひと時。
12:00~13:00 ロッジで休憩、またはバケットシャワー。昼間の暖かいうちにシャワーを浴びるのもおすすめ。朝夕は結構冷えることも。
13:00 ダイニングテントで全員揃ってランチタイム。シンプルでヘルシーなメニューが多いのが嬉しい。ベジタブル揚げ春巻きとサラダ、ベジタブルキッシュ、デザートもフルーツ。どれもすごく美味しかった。
14:00~16:00 フリータイム 昼寝したり読書したり、敷地を散歩したり。
16:00 サファリの前のアフタヌーンティータイム。 いろんなドリンク類とお菓子を楽しめます。
16:30 午後のゲームドライブに出発。19:00くらいまで。サファリを楽しんだ後、夕陽の頃サンダウナー。サファリカーを降りて身体を伸ばしワインやビールとスナックをつまむのがサンダウナーです。ヒポプールなど眺めつつ、最高のひと時。
20:00 全員揃ってのディナータイム 今夜のオードブルは豆入りラタトィユ、テリーヌ風、サラダ。メインはチキンカレーかマトンシチューとクスクス、またはポークチョップ。 メインは自分でよそえるので好きな量を食べられてよかった。デザートはパンナコッタかチョコトリュフ。コーヒーはラウンジのアウトドアスペースで。
22:00 就寝 動物たちの鳴き声を聞きながら、清潔なベッドで眠りにつきました。
ツェツェバエにはご注意を。そしてWASPにも?
大自然も動物もロッジも何もかもいうことのない、素晴らしいカタヴィ国立公園。ですがこんな楽園にもひとつだけ注意すべきことがありました。それはツェツェバエです。カタヴィにはツェツェバエがとっても多いのです。そもそもツェツェバエとはどういうハエか?通常の黒くてずんぐりしたハエとは異なり、茶色がかった細長くやや小さめのハエです。このハエは人を刺すのです。それも刺されるとチクリとかなり痛く、刺された跡は赤く腫れ上がります。よくたくさん刺されたら眠り病になってしまうなんていう怖い話を聞きますが、すべてのツェツェバエが眠り病を引き起こすというわけではないそうです。世界中に23種類いるツェツェバエですが、ここカタヴィには数種類がいます。
タンザニアではセレンゲッティ国立公園にも少しいましたが、ここほど多いのは初めてでした。服の上から刺すので要注意なのです。地元の黒人でも、慣れているとはいえ今なお刺されたら赤く腫れ上がるそうです。虫除けスプレーなどもあまり役に立たないのです。朝のサファリでもいますが、夕方のサファリ中の方がもっと多く発生していました。
どうやって防御するか。気休めでも虫除けスプレーを塗ります。そして牛の尻尾で作られたはたきの様な虫除け棒で防ぐのです。またツェツェバエが好む鮮やかなブルーや濃い色、黒などの服は避けることも大切です。防御していても、靴下の上から私もチクリとやられました。瞬間はかなり痛いです。後で見ると数か所が赤く腫れてかゆくなりました。強力ムヒなどを塗ってしばらくすると治って来ました。ちなみにこのエリアにはマラリアの蚊はほとんどいないそうです。
でももう一つ私にもっと大きな悲劇が起こったのです。公園ゲートのトイレの扉を閉めようとしたとき、突然大きい虫が現れて私の右手中指をグサッと刺したのです。激痛で腫れ上がり、スタッフが氷で冷やしてくれました。一緒にいたニューヨークのドクターがWASPだ、と言いました。ワスプって何だろう?ハチみたいだったけどアブみたいなものだろうか?携帯も圏外で翻訳機能も使えません。とにかく指がパンパンに腫れて指輪がはずせなくなるので抜きなさいとドクター。ディナーの時も皆がWASP!!オーマイゴッド!!大丈夫かと心配してくれました。そんな大さわぎする虫なんだ?!でもロッジでもらった薬が効いてだいぶ治まって来たのでホッと一息する私。
あとで調べたら、WASPとはなんとスズメバチだったのです!!ぎゃーー!!!
まとめ
教訓その1:こうした辺境の地では、いちいちトイレの戸が閉まったかなど確認せずに、ドアなど開けっ放しにしてもOK。ボーっとゆっくり行動せず、動作を機敏にしましょう。そうすればスズメバチに刺されることは免れるでしょう。
少しのろまで不運だった私の経験を生かして、皆さんはカタヴィのサファリを楽しんでください。世界でも指折りの最高のサファリが待っています。