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インドと言えば、タージマハルやアジャンタ・エローラ遺跡やカジュラホ遺跡、ファティプールシクリといった壮大な遺跡が有名ですが、南インドのデカン高原に、これらに負けるとも劣らない大遺跡群があります。それが世界遺産にも登録されているハンピとパッタダカルです。インド最大級の規模を誇るこれらの遺跡は、遺跡好きならずともそのスケールと迫力に圧倒されてしまうことでしょう。南インドが世界に誇るこの大遺跡と周辺の見所をご紹介いたします。
ハンピ遺跡とはなんぞや?!
サトウキビ畑やバナナプランテーションが広がるのどかな風景を眺めながら車を走らせていると、ミスマッチなほどに突如として現れる巨大な岩の山・・・。そう、これがインド最大規模のハンピ遺跡の入り口です。
ヒンドゥー教の王朝として14~16世紀に発展したヴィジャヤナガル朝の王都で、南インド全域を支配していましたが、16世紀半ばにイスラム勢力によって都市は焼き尽くされ、幻と消えてしまいました。多くの遺跡や寺院が破壊されてしまいましたが、からくも難を逃れた40あまりの遺跡や寺院は1986年、世界遺産に指定されました。
ハンピ遺跡はなんと品川区と同じくらいの面積に見所が点在しています。当時は50万人の人々が暮らす、オスマン帝国の都イスタンブールと並ぶ大都市だったといいますが、現在は岩、岩、岩の荒涼とした大地で、当時の繁栄はちょっと想像がつきません・・・。とにかく広い遺跡なので2~3日かけてじっくりと観光できるとベストです。では次から、ハンピ遺跡で必見の重要スポットをご紹介していきます。
ハイライト!ヴィルーパークシャ寺院とヴィッタラ寺院
今もなお寺院として僧侶や参拝者からの信仰を集めているヴィルーパークシャ寺院は、ハンピ遺跡のランドマーク的存在です。この寺院はハンピ最古ともいわれ、7世紀にはすでに存在していたそうです。寺院内は様々な時代に建てられた建造物が並びます。16世紀に建てられた入口の塔門は高さが50mもあり、早々に参拝者は度肝を抜かれることでしょう。入り口をくぐり進んでいくと立派な本殿が現れます。本殿にはシヴァの化身とされるヴィルーパークシャー神が祀られ、外壁には隙間なく見事な彫刻が施されています。本殿前室の天井にはヴィルーパークシャ神が描かれた古い壁画もあるので、本殿に入る前に上を見上げてみてくださいね。
ハンピの2大ハイライトのもう一つヴィッタラ寺院は、15世紀、クリシュナ・デーヴァ・ラーヤ王が戦争に勝利したことを記念に建てた、ハンピ遺跡最大規模の寺院です。マンダパと呼ばれる礼拝堂には56本もの列柱が並び、それぞれに繊細で美しい彫刻が施されています。これらの柱は、叩いたときにすべて異なった音が響くことから、ミュージックストーンとも呼ばれているそうです。寺院の脇に鎮座する石造りの山車や、山車を引くウシをかたどった彫刻も目を惹きます。ヴィッタラ寺院はその彫刻の芸術性の高さからも、当時のヴィジャヤナガル朝様式の最高傑作と評されています。
ヴィジャヤナガル王国の都の中心部、王宮エリア
ハンピ遺跡の中心部から少し離れたところには、かつてのヴィジャヤナガル王国の中心部だった王宮地区があります。残念ながら16世紀の侵略で大部分が破壊されてしまいました。このエリアはイスラムの影響を受けた建築が多いことが特徴です。
王宮地区北側に高い塀に囲まれているエリアがあります。これはザナーナー・エンクロージャーと呼ばれる宮廷の女性が生活をしていた場所です。ひと際目を惹くのは、2階建て構造でバルコニーのついた建物。これはロータス・マハルといって、ヒンドゥーの建築様式にイスラム様式が融合した大変興味深い建物です。このような建築は、王宮地区南東の王妃の浴場でも取り入れられています。このザナーナー・エンクロージャーには当時王宮が保有していた象を飼育していたエレファンツ・ステイブルと呼ばれる建物があります。あまりにも豪華な造りに象小屋というイメージからはかけ離れているように感じます。また、ヴィシュヌ神とその化身ラーマを祀ったハザーララーマ寺院、幾何学模様が美しい階段井戸など、王宮地区には見所も多く点在しています。
周辺の見所その① バーダーミ石窟寺院
ここからはハンピ遺跡を訪れたら、是非一緒に巡りたい周辺スポットをご紹介いたします。
まず一つ目はバーダーミ石窟寺院。
バーダーミはハンピから車で3~4時間、現在は人口約3万人の小さな町ですが、6~8世紀頃にかけて前期チャールキヤ朝の首都が置かれていました。豊かな水をたたえたアガスティアティルタ池と赤色の岩山の眺望が特徴的なこの町には、4つの石窟からなるバーダーミ石窟寺院が存在しています。第1~3窟は6世紀後半に造られたヒンドゥー教窟、第4窟は7~8世紀に造られたジャイナ教窟です。
4つの石窟は下から順に造られました。入口から最も近い第1窟ではシヴァ神、第2窟ではヴィシュヌ神が祀られています。花崗岩をくり抜いて彫られたレリーフは緻密で、石窟内のいたるところで芸術的なレリーフを見る事ができます。第3窟は最も規模が大きく、岩山を大きく横に21mくり抜いて造られていて、それを支えている列柱も当時のまま残されています。ヴィシュヌ神やハリハラ像の彫刻はもちろんのこと、天井にまで彫られたレリーフの美しさには言葉を失います。一部当時の色彩が残っているのも驚きです。第4窟は最も規模が小さく、内部にはジャイナ教の祖師、ティールタンカラの像が刻まれています。
周辺の見所その② パッタダカル
バーダーミから東へ約20㎞、6~8世紀、チャルキヤ朝が各地の彫刻家を招いて造ったヒンドゥ教寺院都市がパッタダカルです。ここは1987年に世界遺産に登録されました。イスラムの破壊から奇跡的に逃れたこの寺院都市には現在9つの寺院が残っていて、ヒンドゥー教のシヴァ神を祀っています。インドの寺院には高い塔を伴う北インド様式と、ピラミッド型の南インド様式と地方によって特徴があるのですが、パッタダカルはその両方の特徴を持つ寺院が混在した大変珍しい場所なのです。
パッタダカル最大の寺院、ヴィールパークシャは外壁がほぼ彫刻で埋められていて、3段のピラミッド型の本堂は圧巻です。またパッタダカルでは各寺院の装飾なども破壊されず残っていて、神々のレリーフなどは息をのむほどの魅力があります。片足をあげて踊るシヴァ神や窓からのぞく人などの面白いレリーフが多く、一つ一つをじっくりと眺めていると時が過ぎるのを忘れてしまいそうです。
この遺跡では北から南へと年代順に遺跡が並んでいるのもユニークです。時代や建築様式など様々な特徴を比べながら見ていると、時代を経過する毎に遺跡の規模が大きくなっていることに気が付くと思います。
アクセスの悪さのためかあまり外国人観光客がいないので、のんびりした雰囲気の中、ゆっくりと遺跡を堪能できるでしょう。
周辺の見所その③ 遺跡に囲まれた田舎村・アイホーレ
アイホーレは6~8世紀のチャールキヤ朝興隆の中心地と推定される場所で、ヒンドゥーやジャイナ教の寺院が100以上存在しています。村はその遺跡の中にあり、外国人観光客もほとんど来ないため、物売りなどもおらず地元の小学生が遠足にきていたり、なんとものんびりした感じが非常に魅力なのです。見所は蹄の形をしたユニークなドゥルガー寺院で、寺院の中にはヒンドゥーの神々の像がきれいに残されています。
寺院の周りにはヤシの木が生えており、南国の雰囲気が漂う中ヒンドゥーの神々の像を見ていると、その昔にタイムスリップしてしまった感覚に陥ります。村の子供達も外国人が珍しいのか、可愛い笑顔を見せてくれます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
広大なインドには東西南北にそれぞれ異なった魅力があり、一度の旅でインドを知ることは到底困難です。どうしても北インドに人気が集まりますが、南インドの知られざる遺跡や、気候も人柄ものんびりとした独特な雰囲気に少しでも興味を持っていただければ幸いです。