軍政権により長く閉ざされていたミャンマー。どうしてもネガティブなイメージが付きまとってしまいますが、見方を変えればそれゆえに独自の文化が守られてきたとも言えます。中国やタイ、ブータン、バングラデシュ、インドと国境を接するミャンマーですが、ここでしか見られないような独自の文化が今も人々の生活の中に根付いているのです。少数民族の数も多く、伝統的な衣装を身に着ける人も少なくありません。
そんなまだまだ知られざる魅力を持っているミャンマーという国について、前回に引き続きご紹介していければと思います。
インワ
ミャンマー第2の都市マンダレーから21kmほどのところにあるこの小さな村へは、渡し舟を漕いで行きます。インワは1354年にビルマ族の王朝になって以来約400年余り王朝の都であった土地。歴史が古く、とりわけレンガ造りの壮麗な僧院やマハーアウンミエは必見です。
私がインワに訪れたのは初めてミャンマーに訪れた2歳の頃。当時はまだ日本人観光客も少なく東洋人が珍しかった時代だったこともあり、日本人の女の子に皆興味津々。バナナ売りの人からバナナを1房貰ったり、お姉さんから民芸品を貰ったり…。とにかく人気者で行く先々でプレゼントを貰ったのだと両親がよく話して聞かせてくれました。そしてそのエピソードの中でも特に印象に残ったのが、ピーナッツ売りの男の子の話。穴の開いたシャツを着たその貧しい少年は、きっと一家の貴重な稼ぎであるはずのピーナッツを、惜しげもなく私にプレゼントしてくれたのだと言います。
東南アジアの人々は子供に優しいというのはよく聞きますし、実際何度も実感する場面はあったのですが、そんな小さな男の子まで異国の子に親切にしてくれたとは…。ミャンマー人の優しさに触れる出来事でした。
インレー湖
インレー湖はミャンマーの中でもとりわけ素朴で自然美に溢れた場所。ボートをチャーターして湖畔のパゴダを眺めたり、水遊びをする子供たちの姿を見て癒されたり。特にユニークなのがこの辺りで暮らすインター族と呼ばれる人々の漁の風景です。細長い舟の先端に片足で立ち、大きなカゴを持ちながら舵を切るスタイルはなんだか曲芸を見ているような気分。
そしてインレー湖をボートで走っていると自然と寄って来るのがカモメの群れ。人に慣れたカモメたちは餌を求めてこうしてボートと並走するように集まってくるのです。船頭さんに教えられてパンを投げてやるとみんな見事にキャッチ!頭の真上あたりまで下降して来るので大はしゃぎです(笑)
また5日ごとに行われるインレー湖周辺の五日市も必見。少数民族の人々が売り買いに来るこの市場は、民族衣装を身に纏った人々を一気に見ることが出来る絶好のチャンス。食品だけでなく観光客向けに民芸品なども売られているので、お土産に買っていくのもいいかもしれません。
マンダレー
ヤンゴンに次ぎミャンマー第2の都市であるマンダレー。かつてはビルマ最後の王朝があった場所でもあり、イギリスに占領される1885年まで約20年間栄えた王都でした。残念ながらいくつかの建物は第二次世界大戦によって焼失。それでもまだ当時の面影を伝える建物が街に点在しており、旧王都やクドードォ・パヤーなど見るべき場所も多いです。
特にクドードォ・パヤーには「世界最大の経典」が眠っており、仏陀が悟りを開いてから死ぬまでの説教を刻んだ石板は、その数なんと729にも及びます。ユネスコの「世界の記憶」にも登録されていて、マンダレーに来たなら一見の価値ありです。
また旧王宮のすぐ北にある「マンダレー・ヒル」と呼ばれる丘もオススメ。丘全体が寺院になっているそれはマンダレー最大の聖地であり、頂上からはマンダレーの街並みを一望することもできるのです。
ミャンマーへの行き方
ミャンマー最大の都市ヤンゴンへの行き方は様々な方法が考えられます。2021年1月現在、直行便は成田発のANAのみですが、1日1回フライトが出ており、所要時間も7時間ほどと便利。午前中に出発してその日の夕刻にはミャンマーに到着するのも、短いスケジュールしか組むことが出来ない人にとって利点でしょう。
一方乗継便はというと、タイ航空でバンコクを経由する行き方や、キャセイパシフィック航空で香港を経由する行き方、ベトナム航空でハノイやホーチミンを経由する行き方がメジャーです。特にバンコク経由が最短で、所要時間10時間ほどと比較的早く行けるので、乗り継ぎ便も候補の一つになります。
またミャンマーへ入国する際はビザが必要になります。ネットで取得できるe-VISAもありますが、大使館で申請するほうがトラブルも少なく安心。カンボジアなど他の国とのコンビネーションツアーの場合、そちらのビザも必要になるので事前に調べて取得しておくことが重要です。
ミャンマーのツアー
日本から比較的近い場所にあるミャンマーは、最短で4日間からツアーを組むことが可能です。しかし4日間だとまわれるのはせいぜいヤンゴン1都市のみ。他の都市にも足を延ばしてみたい場合には、もう少し日程を確保する必要があります。特に定番なのがヤンゴン、バガン、マンダレーの3都市周遊と、ヤンゴン、バガン、マンダレー、インレー湖の4都市周遊の2コースです。しかし最近は別都市の人気も高まってきており、特に先述したチャイティヨーパゴダが目的地として選ばれることも多くなりました。
私が以前訪れた際は5泊6日のツアーで、ヤンゴンとチャイティヨーパゴダ、バガンを巡るコースでした。ただ、チャイティヨーは陽が落ちてからと朝日がのぼる時間が最も美しいので、ゴールデンロック目当てで行くならば山頂に泊まる必要あり。ホテルの数も少ないので、早めに予約をして部屋を確保しておくことが重要です。
ミャンマーの気候
国土が南北に長いミャンマーは地域によって気候が大きく異なるのが特徴です。基本的には中部から南部が熱帯、北部は温帯でとされています。ミャンマーで最も大きな都市であるヤンゴンは年間を通して温暖な気候。最高気温が30度を超えることも多く、雨季の5月から9月には毎年たくさんの雨が降るので、その時期を避けて訪れるのがいいでしょう。
しかし暑い国だからと言って半袖だけで行くのはオススメしません。というのも、東南アジアの国々はエアコンをがんがんにつけている場所が多く、何か羽織っていないといっそ寒いほど。飛行機の中も冷えるので手荷物に1枚羽織れるものを用意しておくといいでしょう。また寺院を訪れる際は靴を脱ぐのがマナー。足の裏もかなり汚れるので、脱ぎ着のしやすい、汚れてもいいサンダルを持っていくのがオススメです。
まとめ
いかがでしたか?アウンサンスーチーさんの件で少しネガティブなイメージを持たれるミャンマーですが、実はこんなにも魅力あふれる国なのです。特に現地の人々の優しさは世界中探してもここほどの場所はそう無いでしょう。ミャンマーは恋人や友人とはもちろん、小さなお子さんがいる家庭でも安心して行ける、心温まる国なのです。