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「バルト三国」という名前を知っている方は多いかもしれませんが、それぞれの国についてはどうでしょう、知っていますか?
バルト三国とは、バルト海の東岸に位置する、エストニア・ラトビア・リトアニアの三国のことです。今回はその中のリトアニアについてご紹介しようと思います。日本と同様に四季があり、世界遺産に登録されているビリニュスを首都とする、優しくて穏やかな歴史を感じることができるリトアニアには、どんな観光地があるのでしょうか。
日本人として行っておきたい、杉原記念館
カウナスは、第二次世界大戦時に首都が置かれていた街でした。そしてこの町の見どころといえば何と言っても杉原千畝記念館です。
当時外交官としてカウナスに滞在していた杉原千畝の元に、ナチスドイツから逃れるために、日本の通過ビザを求めてユダヤ人が押し寄せました。その時代ドイツと同盟を組んでいた日本としては、ユダヤ人にビザを発給することなど許されない事でした。しかし、彼は1940年7月から8月にかけて、寝る間を惜しみ、何本ものペンを潰しながら、日本本国の命令を無視し、無許可でユダヤ人にビザを発行し続けたのです。
日本から遠く離れたリトアニアという国で、自分自身や家族を危険に晒しながらも自分の正義を貫き通すことを決めた杉原千畝の決断は、その当時は決して正しいとは言い難かったでしょう。ただ、彼が最後リトアニアを離れる列車の中でも発行し続けたビザで、ナチスドイツの手から逃れた人たちは世界中に広がり、その血は今でも受け継がれ続けています。
ここでは、そんな杉原千畝によって救われたユダヤ人の体験談や、当時発行されたビザのレプリカ、彼のデスクを再現したスペースなど、様々な展示物が並びます。どれも日本語表記なので英語に自身の無い人でも安心。同じ日本人として、彼の偉業のすべてが分かるこの場所に是非訪れてみてはいかがでしょうか。
写真映えばっちり!不思議な十字架の丘
シャウレイ郊外にある十字架の丘は、訪れる人みんなを不思議な気持ちにさせる場所です。
十字架の丘の起源は17~18世紀、当時ロシア帝国の支配下に入っていたリトアニア人が、独立のため蜂起した犠牲者を祀る目的で遺族が十字架を立てたのが始まりと言われていますが、詳しいことは謎という、なんとも不思議な場所なのです。今でも多くの人々が巡礼に訪れ、それぞれの十字架を置いていくため、その数は今でも増え続けており約50,000個はあるのではないかと言われていますが、これまた詳細な数は不明という、謎に包まれた場所です。
「十字架の丘」という響きだと、日本の墓地のような少し怖い感じをイメージしてしまいますが、実際に行ってみるとお花畑の中にたたずみ、青空によく映える、なんだか暖かい気持ちになれる場所です。発祥や総数もよく分かっておらず、観光客でも誰でも十字架を置くことができるという不思議な場所には、シャウレイの町からバスで訪れることもできますが、本数が少ないので、もし行かれるのであればタクシーや専用車をチャーターされることを検討してみてもいいかもしれません。
現地でも十字架を購入することができますので、あなたの十字架をそっと置いてくるのはいかがでしょうか。
迷うように歩きたい!ビリニュスの旧市街をお散歩
リトアニアの首都であるビリニュス(ヴィリニュス)の旧市街はユネスコの世界文化遺産に登録されています。首都というと、東京のようにビルが沢山建ち並ぶ姿を想像してしまいそうになりますが、ビリニュスは中世の街並みが残る、穏やかでのんびりとした場所です。世界遺産の旧市街は歩いて回るには丁度いい大きさです。
石畳の道が延びるオレンジ屋根の建物の間を歩いていけば、角を曲がるたびに美しい街が顔を覗かせます。何の目的もなくのんびりと散歩したくなってしまう、そんな優しくて美しい街の中で迷子になるのがこの街の楽しみ方なのかもしれません。
旧市街の中には観光スポットも沢山あります。その中でもシンボルとなっているのが「夜明けの門」です。旧市街には元々9つの門があったのですが、現在はこの夜明けの門のみが姿を残しています。門の中には聖母マリアの肖像があり、奇跡を起こすと信じられているため、今でも祈りをささげる人たちの姿が多く見られます。
他にもギリシャ神殿のような大聖堂、ビリニュス大学、教会など、街の雰囲気にしっくり馴染む素敵な建物を見て回っるだけでも時間が足りなくなってしまいます。
旧市街から少し足を延ばした先にある、ビリニュスを代表する聖ペテロ&パウロ教会も見所のある観光地です。教会の内装は漆喰彫刻で埋め尽くされており、その美しさにはついため息がもれてしまいます。
湖の上に建つ可愛すぎるお城、トラカイ城
ビリニュスから車で約1時間、ビリニュスに移るまで首都が置かれていたトゥラカイの見どころといえば、トラカイ城です。大きな湖に浮かぶその姿は、まるでディズニー映画やおとぎ話に出てきそうな可愛さ。ゲームでいうならラスボスが待ち受けていそうなくらいどっしりと構えています。夏には湖でボートを楽しむこともできますし、冬になると湖が凍ってしまうのですが、それはそれでとても見ごたえがあります。
もちろん城内に入ることもできます。入ってみると中には拷問道具や跳ね橋、敵が攻めて来た際に守りやすいように作られている狭い階段が現れます。いくら可愛いといっても戦争の為に作られたお城なのだなぁとなんとなくしんみりともします。
トゥラカイにはトルコ系移民がたくさん住んでいるため、町中には、三つ窓が並んでいる彼らの伝統家屋がたくさんあります。また、伝統料理である「キビナイ」というミートパイが有名で、カフェやレストランで食べることができます。湖に面したオープンテラスもありますので、トゥラカイ城を見ながらほっと一息つく時間は至福のひと時!!
キビナイはリトアニアのスーパーでは普通に売られていますので、もしトゥラカイまで行くことができなかったとしても、是非トゥラカイの景色を想像しながら味を楽しんでみて下さい。味はにくまんのようで意外に何個でもぺろっと食べられてしまいます。
自由な独立国家!?ユニークなウジュピス共和国
ビリニュスの旧市街東に、正式に国とは認められていませんが、独立を宣言した「ウジュピス共和国」という地域があります。独自の憲法・大統領・国旗を持ち、「共和国」を名乗っていますが、あくまでも架空の国なので、パスポートが無くても入ることができます。
独立を宣言していると言っても、対立の末に独立ということではなく、長い間旧市街から切り離されて治安も悪くなってしまっていたウジュピス地域に、寂れた独特な雰囲気を好んでアーティストや若者が集まってきて、ユーモアの一種として独立したという経緯なので、ご安心ください。
元々治安が良くない地域だったウジュピスですが、近年は再開発が進み、富裕層の人たちも移り住んでくるなど改善がされており、今ではカフェやアートスペース、レストランやお土産屋さんなどもできていて、観光客でもゆっくりと散策が楽しめるようになっています。アートの町と言われるだけあって、独特の雰囲気とカラフルな建物が面白いです。街のあちらこちらにあるアートの数々を楽しんだ後は、お土産屋さんでちょっとしたアート作品を購入するのも楽しいですし、勝手に国を作ってしまったなんて、土産話にぴったりじゃないでしょうか。