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美味しい食事とワインに舌鼓を打ち、壮大な大自然や悠久の歴史ロマンを感じられる国、イタリア。
誰もが憧れるローマやベネチア、ミラノといったイタリアの有名な観光地も魅力的ですが、すでに訪れた方も多いでしょう。また、近年はオーバーツーリズムの問題もあり、どこに行っても観光客で混雑している場所は避けたいと考える方もいらっしゃると思います。
そんな方におすすめしたいのが、イタリアの北部に位置する「エミリオ・ロマーニャ州」と「トスカーナ州」です。
この記事では、世界100ヵ国以上を旅してきた「旅のプロ」として知られる橋本が、コロナ禍を乗り越えて2023年9月に訪れたトスカーナ州で訪れた小さな村について紹介いたします。
オルチャ渓谷の小さな街とは?
ヨーロッパ随一の美しい田園風景を持つオルチャ渓谷。目印のように並ぶ糸杉や緩やかに折り重なる丘陵地帯は、どこかホッとするような懐かしさとともに、心を豊かにしてくれるようなリラックスしたひとときを提供してくれます。
その風景の美しさゆえ、ルネサンス期に栄華を誇ったトスカーナ地方の貴族たちはこぞって、オルチャ渓谷に大きなお屋敷を建て、田舎暮らしを楽しんでいたそうです。また、多くの芸術家も訪れ、この風景にインスピレーションを受け、オルチャ渓谷を描いた数々の作品を残しています。緑の丘陵が描くなだらかな曲線と牧歌的な美しさは多くの人々に伝わり、現在もルネサンス時代と変わらない雄大な風景は多くの人々を魅了し続けています。
そんなオルチャ渓谷には、中世に栄えた小さな村が、散りばめられた宝石のようにいくつも存在します。
これらの村の特徴は、丘陵地帯の頂上に位置し、外敵から身を守るために堅牢な城壁で囲まれており、街並みを一望できる鐘楼がそびえています。そのため、どの村も遠く離れた場所から、その凛々しい街並みが確認できるのです。
その美しさに惹かれて、城壁の中に一歩足を踏み入れると、街並みはルネサンス期そのまま。石造りの家々が軒を連ね、村の中心には優美なドゥオーモや市庁舎が建ち並んでいます。田舎の奥地にある「ただの小さな村」と思っていると大間違い。その豪奢な造りに圧倒されることでしょう。
それでは思わず歩いてみたくなるような小さな村、そんな貴族や芸術家に愛された特別な村を解説していきましょう。
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モンテプルチャーノ 有名ワインのふるさと
モンテプルチャーノは、村の名前としてでなく、ワインの産地として知られているかもしれません。ブドウ畑に囲まれた風景の中に、ポツンと佇むその姿が印象的な小さな村ですが、農業や手工業が大いに栄え、13世紀から15世紀にかけて隆盛を迎えました。
特に、フィレンツェ公国に統治された時代には、著名な建築家であるアントニオ・ダ・サンガッロなどが招聘され、新しい教会や貴族の邸宅などが造られました。南北に約1キロ、東西200mほどのほんの小さな村には、コントゥッチ宮やサン・ビアジオ聖堂など、ルネサンス期の傑作が建ち並んでいます。
もちろん、ワイン好きな方には大変おすすめです。細い通りにワインショップが軒を連ねており、ここでしか手に入らない良質なワインやグッズが店先に並んでいます。ワインを品定めしたり、試飲を楽しむのもよいですが、モンテプルチャーノのブドウ畑を眺めつつ、高品質なワインを楽しむなら手頃なカフェバー「Caffè Poliziano」に訪れるのが私のおすすめです。
クラシックな内装を持つ店内からは見事なキアーナの谷が一望できます。ぜひテラス席に腰かけて、特産ワインを味わいつつ雄大な景色を心行くまで堪能してください。
モンティキエッロ 中世の人々の息遣いが聞こえてきそうな小さな村
今回、紹介する中で最もこじんまりとしたわずか人口200人の小さな村。世界遺産の村ピエンツァからわずか8kmの場所に位置していますが、こちらには外国人観光客は皆無で、中世から時が止まっているような静かな雰囲気が漂っています。いまにも中世の人々の息遣いが聞こえてきそうです。
村の中心にある、 13世紀に建築された聖レオナルド・クリストフォロ教会には、ルネサンス期のシエナ派の画家たちのフレスコ画が残っています。小さな村ではありますが、村人たちがによって大切に守られてきたことが分かります。
きれいに手入れされた植木やゴミ一つ落ちていない石畳の道から、今もこの村に住む人々の誇りや旅行者を歓迎してるような温かさを感じることができます。
ピエンツァ ローマ教皇の理想郷 世界遺産の村
数あるオルチャ渓谷の村々の中でも、賑わいを見せるのがピエンツァ。それもそのはず、東西400mほどのわずかな面積に、ルネサンス時代の建築が建ち並び、その美しさから1996年に世界遺産に登録されました。
「故郷に錦を飾る」とはよく言ったもので、15世紀にローマ教皇に即位したこの地出身のピウス2世は、その権力と経済力によって自らの故郷を理想郷とするべく、教皇庁の建築顧問であったベルナルド・ロッセリーノをこの地に招き、ルネサンス建築で統一する計画を立ち上げました。
もともとはコルシニャーノという名前の村でしたが、自らの名前を冠してピエンツァと名付けたのもその時期です。
ルネサンス様式のファサードを持つ大聖堂や、トスカーナの村の多くがそうだったように、ピウス2世の住居として建てられたピッコローミニ宮はもちろん、ピエンツァ名物のペコリーノチーズのお店など、見どころは尽きませんが、是非とも訪れてほしいのがピエンツァ城壁そばにあるレストラン「Ristorante la Terrazza della Val d’Orcia」。
レストランのテラス席から眺める雄大なオルチャ渓谷は圧巻です。美味しいワインとトスカーナの郷土料理を最高の景色の中で堪能してください。穴場的存在のため、素晴らしい景観にかかわらず観光客は少なめなのもGOOD。ゆっくりと食事がとれます。もちろん、美味しさは現地イタリア人スタッフの折り紙つきです。
モンタルチーノ イタリア3大ワインの産地
ピエンツァから西へ約25㎞。ブドウ畑に囲まれた小高い丘の上に建つ、堅牢な城塞をもつ小さな村、モンタルチーノ。紀元前よりエトルリア人が住んでいたとされ、西暦814年には文献にその名前が記され、中世にはローマとフランスを結ぶ街道の拠点となり、靴などの革製品の流通の拠点として繁栄を謳歌しました。
しかし、トスカーナの村の多くがそうだったように、13世紀の「モンタペルティの戦い」以降は、シエナ共和国の衛星都市の1つとして組み込まれ、それ以降はトスカーナのほかの都市同様に、教皇派と皇帝派の争いにも巻き込まれ、その存在感を徐々に低下させていきます。
そのためモンタルチーノの街並みは、中世から時が止まったような静かな風景が続いています。
村の外れにある城壁に登れば、シエナの支配下にあった時代の面影が残る、昔ながらの街並みが見渡せることでしょう。
この小さな村を世界的に有名にしたのがイタリア3大ワインの1つに数えられる「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」です。
「イタリアワインの女王」とも称されるこのワインが誕生したのは、19世紀後半に、この地に住んでいたクレメント・サンティが、ブドウの品種「サンジョヴェーゼ」の突然変異を発見したことが始まりです。その亜種「ブルネッロ」は、通常のブドウに比べ大粒で色味が強く、熟成させるほど味わいに深みが増すことに気付いたサンティは研究を重ねました。その後、なんと6代にもわたってワインの研究が継承され、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」を完成させたと言います。
ブルネッロ種を100%使用すること、さらに最低でも50ヶ月もの熟成期間を取ることが名誉ある「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」を名乗るための条件になっています。
モンタルチーノのワイナリーにぜひ立ち寄って、特別な気候や風土によって育まれた名ワインをぜひお楽しみください。
シエナ フィレンツェと競った歴史都市
フィレンツェと並び称される世界遺産の街、シエナ。13~14世紀のルネサンス期にはその経済力を背景に、学問や芸術の中心地として栄え、「シエナ派」と呼ばれる芸術文化が花開いた都市です。
現在のシエナの街並みは、シエナが最も栄えた13~14世紀に建てられた建造物が多く残っています。ドゥオーモやカンポ広場、市庁舎(プッブリコ宮)など、ゴシック様式の名建築が建設されたのもこの時期です。小さな街ですが、建築だけではなく、美術館や博物館など、1日でも足りないほど必見のスポットが溢れています。
写実性と人間らしさを重んじたフィレンツェのルネサンス様式と、繊細な色彩と神秘性を好んだシエナのゴシック様式。中世芸術の最高峰にあった2つの潮流の違いを感じながら、街を歩くのも興味深い体験になるでしょう。
そんなシエナの街を歩けば、街のいたるところに「パリオ」の写真を見かけるはずです。「パリオ」とは、街の中心部であるカンポ広場で繰り広げられる、年に2回のお祭りのことです。7月2日と8月16日に開催されるこの競馬レースは、シエナの17地区のうち10の地区が出場し、つまり10頭の馬がその順位を競います。
いわゆる馬の競走ではありますが、歴史的なイベントのため、現在の競馬とは違い、馬にまたがるときの鞍がない上、ほかの騎手や馬への妨害が認められているという非常に危険なものです。
シエナの人々にとって、この「パリオ」は生きがいそのもの。パリオの時期にはすぐにホテルが埋まってしまいますので、シエナへ夏の旅行をご検討される場合は注意しましょう。
サン・ジミニャーノ 中世の摩天楼の街
シエナから北西に約40km。シエナ同様、世界遺産に認定されているトスカーナの小さな街、サン・ジミニャーノ 。その街並みをユニークなものにしているのが、12~13世紀に競って建てられたという見張りの塔です。富や権力のシンボルとして、最盛期にはなんと72本もの塔が建てられていたそうです。現在残っているのは14本のみですが、小さな町にもかかわらず圧倒的な塔の数。「中世のマンハッタン」とも呼ばれているのも納得の多さです。
数ある塔の中でもシンボル的な存在なのが14世紀に造られた「グロッサの塔」(Torre Grossa)です。現在は美術館として開館しているポポロ宮に併設されているこちらの塔は、54mの町一番の高さを誇ります。
180段あまりの階段を登ったあとの、360度広がるパノラマは達成感と解放感で、まるで空を飛んでいるかのようです。
遠くまで広がる緩やかな丘陵地帯に広がるブドウやオリーブ農園、そして眼下に広がる石造りの塔や街並みの迫力ある景色が一望のもとに収めることができます。
ぜひサン・ジミニャーノに訪れた際には、記念に塔に登ることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか?
オルチャ渓谷の観光スポットとして、以下の4つの小さな村と2つの世界遺産の街、シエナとサン・ジミニャーノをご紹介しました。
1:モンテプルチャーノ: 有名ワインのふるさと
2:モンティキエッロ: 中世の人々の息遣いが聞こえてきそうな村
3:ピエンツァ: ローマ教皇の理想郷、世界遺産の村
4:モンタルチーノ: イタリア3大ワインの産地
5:シエナ: フィレンツェと競った歴史都市
6:サン・ジミニャーノ: 中世の摩天楼の街
トスカーナ地方の小さな村は交通の便が悪いため、専用車を利用して効率的に訪れるのがおすすめです。専用車を利用したトスカーナ旅行をご検討の方は、ファイブスタークラブにお問い合わせください。お客様のご要望に合わせて自由にプランニングが可能であり、トスカーナに詳しいスタッフが親身にサポートいたします。また、アグリツーリズモの滞在など、さまざまなアレンジも可能です。