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美食の王国がスペインにあるバスク地方です。スペインでミシュランの3ツ星を獲得したレストランは、11軒のうち3軒はサンセバスチャンとその近郊にあります。人口わずか18万弱の小都市が世界一美味しい街といわれるのにもうなずけます。そして、世界中の旅人がグルメ目的にこの町を訪れるわけです。
決して星付きレストランが絶対美味しいというわけではないのですが、やはり3ツ星ともなるとバスクの3ツ星は一度は味わってみたいと考えました。数年前に2軒、そしてつい最近に3軒目を訪れ、3ツ星を3軒制覇した私です。果たしてその結果はどうだったのでしょうか?
3ツ星レストランを制覇
サンセバスチャンの3ツ星レストラン制覇に向けて、私はまず数年前に「アルサック」と「マルティンベラサテギ」2軒のお店に行く計画を立てました。コース料理が全部出されるのに最低3時間はかかります。夜だと大変なので両方ともランチにしました。大体13:30スタートでデギュスタシオンメニュー(お任せ)は当時195ユーロ(当時のレートで約3万円)でした。このコースは今では280ユーロ(45,881円)から395ユーロ(64,725円)に値上がりしています。この2軒に連日ランチに通ったわけです。今から思えばだいぶ安かったのでラッキーでした。
見た目も美しく創作性のある美味しい品々が次から次へと出てきて、思い出に残る至福のひとときとなったのです。レストランはいずれも街の近郊に位置し、それぞれに趣向を凝らしたおすすめメニューを提供しています。そしてどれもが超人気店なので早めに予約を取る必要があります。休業日も決まっているので、レストランの営業日に合わせて、また予約が取れる日に合わせての旅の計画が必要になりました。その他の観光は二の次?だったわけです。
そして3軒目で残っていた「アケラレ」は2024年5月に訪問。こちらはオーベルジュなのでホテルにも1泊してディナーを頂きました。まずは最新のこのオーベルジュのことからお話ししましょう。
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サンセバスチャンの3ツ星レストラン一覧
オーベルジュ・アケラレ
サンセバスチャンの町中から車で20分ほど走った郊外にこのオーベルジュはあります。海を見渡す丘の上にあってモダンでスタイリッシュな白を基調にしたインテリアが上品で素敵です。ここではゆっくり滞在して、時間を気にせずディナーを楽しめるというのがコンセプトのよう。
ディナータイムは20:30スタートです。5月中旬でもこの辺りは日が長いので夜10時くらいまで日が沈みません。食べ始めてしばらくするうちに、海に沈む夕日が眺められるという趣向です。
このレストランの料理は、バスクの郷土料理をオマージュした料理という独特のラインアップでした。ただし、それらのこだわりのある料理は私たちの口には合わず、結論から言うとがっかりで残念だったの一言。
バスクならではの新鮮なはずの魚介類を使っているのに、なぜか全体的に生臭い料理ばかり。バスク料理によく登場する塩タラも、なぜか生のまま紅色に染めてバラの花に見立てていて、見た目はそこそこきれいなのに、食べると塩辛くて臭い生の塩タラに過ぎなかったのです。普通なら食べられたものではありません。
海藻の前菜も、刺身のつまに良く付けてあるトサカノリという赤い海藻や、わけのわからない茶色い海藻などを生のままのとフリットしたのを一緒に盛り付けてあるだけの一皿、家族全員が一口食べて止めてしまったほどひどいものでした。なぜこんな料理が3ツ星を獲っているのか???クエスチョンマークが頭の上に100個位ついていた私たちでした。
料理をほとんど残す我々のことを心配して、スタッフの方はいちいち声をかけてくれ、「お気に召さないようなら他の料理をお出ししますから、何なりとお知らせください」などと親切なので申し訳ない気分になりました。サービスをする人たちは、基本、心配りがしっかりしていて感じがいい方々です。
料理がすべて塩気が強すぎるのも好みではなかったし、ホワイトアスパラは湯がき過ぎ。メルルーサは海藻の中でスチームされ、日本のとろろ昆布を皮に見立てて貼り付けてあるものの、これも生臭さしか感じません。途中で、ほとんど食べなくてもお腹がいっぱいに。美味しいものはお腹いっぱいでもたくさん食べられるのに、その真逆なのです。
長年ミシュランの星を獲ってきたというシェフは現在75歳だそう。
家族皆が同じ感想で、わざわざここで食事する目的でオーベルジュの予約を取って、安くない費用をかけてきた結果がこれだったことに落胆していました。
後で思い出せば、これも勉強にはなったと思います。バスクの郷土料理としては、こういう料理が好みの人もいるはずですから。私たちの口に合わなかったことだけは残念でしたが。
レストラン名 | アケラレ/Akelare |
住所 | Padre Orkolaga Ibilbidea, 56, 20008 Donostia, Gipuzkoa, Spain |
TEL | +34 943 31 12 09 |
公式サイト | https://akelarre.net/en/ |
アルザック
数年前最初に3ツ星を目指してランチを食べに行った1軒目がこの「アルサック」でした。
日本人でもグルメな人なら結構知っていたのがこのお店でしょう。サンセバスチャンの3ツ星のレストランの中でも圧倒的に日本人ゲストがたくさん来ていました。お店は町はずれにあって、外観はわりとシンプルです。それほど高級感に溢れた感じではありません。
店内はテーブルがたくさんあって、あまりゆったりした印象ではないようです。混んでいる分サービスも少し雑でした。
このお店の料理の特徴は、挑戦的なバスク料理で少量多皿。どれもが見た目ユニークで斬新なものが目立ちます。空き缶を潰した上に野菜を載せたり、バネの上にお肉を載せたり。
新バスク料理を生み出した元祖的存在シェフ、ホアン・マリ・アルサック氏とその娘さんであるエレナ氏が二人で作りたいのが、バスクらしいと思ってもらえる料理だそうです。発想はあくまでも自由なもの。それが面白いと思うゲストも多いのでしょう。
ただし、私には少々気をてらいすぎな印象で、本当に美味しい味かというと、それほどの感動はなかったかもしれません。
レストラン名 | アルサック/Arzak |
住所 | PAlcalde J. Elosegi Hiribidea, 273, 20015 Donostia, Gipuzkoa, Spain |
TEL | +34943278465 |
公式サイト | https://www.arzak.es/ |
マルティン・ベラサテギ
サンセバスチャンの3ツ星レストランの中で、ダントツに気に入ったお店がこの「マルティン・ベラサテギ」でした。シェフの名前を冠したレストランは、サンセバスチャンの町から車で20分ほどの郊外にあって、緑豊かなのどかな風景に囲まれた閑静なお店です。入口から高級感があって、店内もテーブル間のスペースも十分なゆったりしたつくりで、エレガントなムードが漂っています。サービスも丁寧で感じがいいのです。
初めて行くならお薦めはなんといってもデギュスタシオンコース。少量多皿でいろいろ味わえて楽しく、感動的な料理がどんどん出てきます。少食の人でも結構食べられるはず。私自身が少食ですがほぼ完食!見た目にも美しく見とれてしまうものが多いのです。味もすべて満足度が高くレベルが高いものばかり。
バスクの挑戦的な料理の星付きのお店では、概して奇をてらいすぎて味が追い付かないことが時々見受けられるのですが、このお店ではどれ一つとして味が外れたものはなく、さすがはバスクの頂点ともよばれるシェフの料理です。
そして嬉しかったのは、シェフがテーブルに来て挨拶してくれ、一緒に記念写真を撮らせてくれたことです。他の2店ではなかったのですが、サンセバスチャンでナンバー1のシェフが、むしろこうしたホスピタリティを持ち、気取らず温かくゲストをもてなしてくれたのは本当に素晴らしいと感動した私でした。
レストラン名 | マルティン・ベラサテギ/Martin Berasategui |
住所 | Loidi Kalea, 4, 20160 Lasarte-Oria, Gipuzkoa, Spain |
TEL | +34943366471 |
公式サイト | https://www.martinberasategui.com/ |
私がおススメするレストランとは?
ここまで読んでくだされば結論はお判りでしょう。サンセバスチャンの3ツ星レストランの中で、私が強くおすすめするのが何といっても「マルティンベラサテギ」です。2024年6月現在、デギュスタシオンコースの料金は395ユーロ(64,725円)となっていました。円安のさなかに行くにはちょっとした冒険価格ですね。でも行ってみる価値大です。
サンセバスチャンには美味しくて楽しいバルもいっぱいあります。食べる楽しさはそれでも十分なのですが、せっかく世界の美食の頂点とも言われるこの町に行くのなら、一度は3ツ星を目指してみるのもいいのではないでしょうか?お店を間違わなければ、とっても感動的な料理に出会えるはずです。