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ポーランド・アウシュビッツに訪れるなら見てほしい名作【行く前に見ておきたい海外映画5選】

アウシュヴィッツ強制収容所のスローガン「働けば自由になる」

素晴らしい映画は、自分には全く関係がない出来事であっても、まるで自分が物語の主人公になったかのように感じさせてくれますよね。映画の中でも「屈指の名作」とされる作品には、人種・性別・国境を越えた人間にとっての普遍的な感情を描きだし、見ている我々にも強いメッセージを投げかけてきます。
今回、ご紹介するのはポーランドに旅行する前に是非見ていただきたい映画の名作選です。実際、ポーランドに行った私が「見ておいてよかった~」と思った作品と「行く前に見ておけばよかった!」と感じた作品を中心に選びました。
ポーランドの歴史を語る上で、ナチス・ユダヤ人についての知識があれば、ポーランドの理解が一層深まります。ここで紹介するのは数あるナチス・ユダヤ人をテーマにした作品の中でもとりわけ手に入りやすく、名作と呼ばれているものですので旅行前のみならず、いずれも見ておいて損はありません!お時間があるときに是非ご覧ください。
※一部、メインの舞台がポーランドではない映画もありますが、ナチスやユダヤ人の置かれた状況を理解するのに役に立つため選びました。

シンドラーのリスト(1993年)

クラクフにあるポーランド最古のユダヤ人街 カジミエシュ地区はロケ地としても使われました。

1993年に公開されたアメリカ映画。第2次世界大戦中のポーランドにやってきたドイツ人実業家オスカー・シンドラーが1000人以上の自社工場のユダヤ人従業員を「軍需工場の生産力として必要」とし、アウシュヴィッツ行きを阻止したという実話をベースにした作品。第66回アカデミー賞では12部門にノミネートされ、7部門で受賞。現在もアメリカ映画史上屈指の名作に数えられています。

カジミエシュ地区は今はお洒落なスポットとして再開発が進んでいます。

監督はスティーヴン・スピルバーグ。監督自身もユダヤ系であったことからユダヤ人の悲劇を描くこの作品に着手するまでには葛藤があったそうです。ホロコーストという重いテーマのため、商業的に成功するのが難しいとみた配給会社は『ジュラシック・パーク』(同1993年公開)の制作を条件に『シンドラーのリスト』の配給をスピルバーグに許可したそうです。(それよりも『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』を同時期に作り上げたというスピルバーグの非凡さに驚きですが。)
ポーランド政府はこの作品について全面的な協力をし、すべてのロケ地は実際に起こった現場で撮影されました。クラクフのカジミエシュ地区、アウシュヴィッツ収容所、収容所での生活などすべてがリアルに描かれています。
アウシュヴィッツに訪れる前にどれか1つを見るなら、という方にはこちらをおすすめします。

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サウルの息子(2015年)

アウシュヴィッツにあるガス室のレプリカ

2015年に公開されたハンガリー映画です。第2次世界大戦中のアウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所を舞台に、ある<ゾンダーコマンド>の1日半の出来事を描いた映画です。監督はハンガリー映画界の巨匠サボー・イシュトヴァーン。第68回カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリを受賞、第88回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞しました。アカデミー賞でハンガリー作品がノミネートされるのはサボー・イシュトヴァーン監督の『ハヌッセン』以来27年ぶりのことだそうです。

ガス室はドイツ軍により証拠隠滅のため破壊され、瓦礫となっている

アウシュヴィッツでは一部のユダヤ人たちを監視役や指示役として働かせていました。ナチス軍は囚人の同胞であるユダヤ人を働かせることで、囚人たちにアウシュヴィッツが大量殺戮の現場であることを悟られないようにしていたそうです。
そんなユダヤ人の中には<ゾンダーコマンド>と呼ばれる人々がいました。直訳すると「特殊部隊」、「特命部隊」という意味です。しかし実際の任務はガス室で絶命した同胞のユダヤ人の死体処理係。中には知り合いの死体や自分の子供の死体と直面することもあったそうです。彼らはナチスの軍人によってその任務を強制されているため従わなければなりません。拒否したとしても死が待つのみです。
この作品ではそのゾンダーコマンドである主人公の背中や顔が画面の半分の大写しの状態で物語が進みます。主人公以外の光景にはピントがあっておらず、ぼんやりとしか映りませんが、この撮影手法が独特なリアリティを作品に与えています。
視聴者は、そのぼんやりとした主人公の周りの光景の中に裸で逃げ惑う人々、燃やされる死体の山など悲惨な現実が目の前に繰り広げられていることがわかります。ピントがあっていないのは主人公が現実を直視できない心情、自分の人間らしさが麻痺していくような心の表れなのです。

ジョジョ・ラビット(2019年)

グダンスクにある第2次世界大戦博物館にはナチスドイツにについての展示も豊富

2019年公開のアメリカ映画。第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネート、1部門受賞。監督はニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ。自身はポリネシア系ユダヤ人ですが、本作では主人公のイマジナリーフレンド(空想の友人)のヒトラーを演じています。
舞台は第2次世界大戦中のドイツ。ヒトラーユーゲント(ナチス党内の青少年組織)に所属する主人公は、身体が弱く周囲からいじめられる日々の中イマジナリーフレンドのヒトラーが唯一の味方、という孤独な少年。そんなある日、母親が密かにかくまっていたユダヤ人の少女との出会いから徐々にユダヤ人への考え方、自身のナショナリズムと向き合うことになる、というストーリーです。

ロケはチェコにて行われたそうです。写真はビールの街としても知られるプルゼニュ。

この映画の興味深いのは、ナチスによるユダヤ人の弾圧というテーマを主軸にしながらも、コメディタッチに描いている点です。そのため「ナチスやユダヤ人の映画は暗くて、重いんでしょ?」という方に是非見ていただきたい作品です。事前知識がなくても、随所に織り込まれるギャグには誰もがクスっと笑ってしまいます。
特に引き込まれるのは主人公ジョジョ役のローマン・グリフィン・デイヴィスの演技。このあどけない少年の笑い、悲しみ、驚き、戸惑いの表情に終始私たちの心は鷲掴みにされることでしょう。

戦場のピアニスト(2002年)

ユダヤ人街カジミエシュ地区にあるアウグスティアーノ教会

2002年公開のフランス・ドイツ・ポーランド・イギリスの合作映画。原作はユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの戦時中の体験をまとめた『ある都市の死』。監督は自身もユダヤ人で幼少期はクラクフで過ごし、アウシュヴィッツに連行された経歴を持つロマン・ポランスキー。
この作品はカンヌ映画祭にて最高賞パルム・ドールを受賞、アカデミー賞では7部門にノミネートされ3部門を受賞しました。

ワルシャワの中心部では毎夜ショパン作品のミニコンサートが開かれています。

舞台は1930年代後半、ポーランド・ワルシャワ。ピアニストとして活躍していたシュピルマンの視点で物語は進みます。ナチスドイツがポーランドに侵攻し、財産の没収などユダヤ人への弾圧が始まります。次第に生活環境が悪化していくユダヤ人たちはゲットー(ユダヤ人隔離地域)に押し込められ、とうとう生活にも困窮していきます。
ほどなくユダヤ人は強制収容所へ移送されます。その中でシュピルマンは運よく難を逃れ、命からがらの逃亡生活を送りますが・・・。
あれほど美しかったワルシャワ街並みが瓦礫の山に変わってしまったシーンや響き渡るショパンのノクターンの響きにはポーランドの悲しい歴史を重ねずにはいられません。第2次世界大戦の開始から戦後までを丁寧に描いたリアリティ溢れる傑作です。

ライフ・イズ・ビューティフル(1998年)

ロケ地はイタリアのトスカーナ地方のアレッツォ。写真は同じトスカーナのシエナの街並み。

1997年のイタリア映画です。監督はロベルト・ベニーニ。ベニーニは監督の他に、脚本と主演も務めています。ベニーニはこの作品以前は日本ではほとんど無名でしたが、この作品が世界中で称賛され一躍有名になりました。
第51回カンヌ国際映画祭(1998年)では審査員グランプリを受賞、第71回米国アカデミー賞(1999年)では7部門にノミネートされ3部門を受賞しました。

こちらも同じトスカーナ地方の街・サンジミニャーノです。

舞台は1939年、第2次世界大戦前夜のイタリアのとある街。本屋を開業するべく越してきたばかりのユダヤ系イタリア人のグイドは、小学校教師のドーラに一目ぼれをします。グイドによる猛烈なアタックの末、めでたく結婚することになります。
子供にも恵まれ、幸せな生活が続くと思われた矢先、ドイツ軍が進駐。そして日を追うごとに厳しくなるユダヤ系への迫害。とうとうグイド親子は強制収容所に送られてしまいますが・・・。
この作品が素晴らしいのは随所に、グイドのイタリア人らしい陽気なジョークが盛り込まれ豊かな彩りを添えている点でしょう。ユダヤ人の迫害が強まる中でのグイドのジョークは「苦しいときこそ笑っていこうよ」というメッセージのようで、見ている私たちも前向きな気持ちにさせてくれます。
こちらも『ジョジョ・ラビット』同様、コメディタッチで描かれているので、ナチスやユダヤというワードから「重苦しいんでしょ?」と敬遠している人にこそ是非見てほしい、まさに名作と呼ばれるのに相応しい作品です。

サラの鍵(2010年)

2010年に公開されたフランス映画で、同名のベストセラー小説を映画化したものです。
第二次世界大戦下に、ナチス・ドイツによる占領下のフランスで起きたユダヤ人大量検挙事件が題材となっています。

パリで暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリアは、フランス最大のユダヤ人検挙「ヴェル・ディヴ事件」の取材に取り組んでいました。
当時、45歳にして子供を授かり、夫との価値観の違いから人生に悩んでいたジュリアでしたが、取材を通して過去に自分の住んでいるアパートで起きた悲劇を知ることになり、人生を切り開いていくストーリー。

ホロコーストがその後の人々に与えた影響や感情が描き出されています。
過去と現在の物語が展開していくにつれ、真実が徐々に明らかになっていく流れは、ミステリーとしても楽しめるので、ミステリー好きな方にもおすすめです。

黄色い星の子供たち(2010年)

こちらも同じく「ヴェル・ディヴ事件」を題材にしたフランスの歴史映画です。ナチス・ドイツの占領下のフランスに生きる子どもたちの物語が描かれています。
当時、フランスにいたユダヤ人は胸に黄色い星を付けるよう義務付けられ、公園や映画館などには入れませんでした。それでも希望を捨てず、ユダヤ人の家族と共にささやかに暮らしていた11歳のジョーは、ある日、ユダヤ人一斉検挙によりヴェル・ディヴに送られてしまいます。
ヴェル・ディヴでは酷い扱いを受けるジョー達ですが、彼らユダヤ人を献身的に治療する看護師や医師もいました。

絶望的な状況下でも、ささやかな希望を胸に必死に生きる子ども達と、看護師たちとの交流を描く心打たれるストーリー。
夫の家族にユダヤ人のいるローズ・ボッシュ監督が、生き残った人々の証言を元に、フィクションを交えながら作り上げた作品です。
悲惨な結末の多いホロコースト関連の作品のなかでも、希望が描かれた本作は、「シンドラーのリスト」に感動した方におすすめします。

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まとめ

以上の7作品は映画史に燦然と輝く名作ばかりですので、ポーランド行く前はもちろん、1人でも家族でも楽しめる作品ですのでSTAY HOMEのときもピッタリですよ。
ぜひ旅行前にチェックして、ポーランド旅行をより充実させましょう。

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