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私はアイルランドのツアープラニングをして15年、その間多くの人にアイルランドの旅のアドバイスもしてきました。その私が思うにアイルランドの良さを表現するのは難しい。フランスのモンサンミッシュル、ドイツのノイシュバンシュタイン城のような大観光地があるわけでもない。自然が豊かなのだが、だからといってスイスアルプスやアイスランドのようなとんでもない絶景があるわけでもない。誤解を恐れずにいえば、見どころが少ない国なのかもしれません。しかし、行った人の評判は意外と良いのです。なぜ? そんな疑問にも答えながらアイルランド旅にご案内したいと思います
ケルトの文化にふれあいたい
ケルト人は西ヨーロッパの先住民族といわれています。彼らは、ゲルマン民族やラテン民族よりはるか以前、ヨーロッパ大陸を広範囲に支配していました。しかし数々の戦いに破れ、アイルランド島まで撤退を余儀なくされたのでした。ケルト独自の十字架・ハイクロスが残る初期キリスト教の修道院跡など、深く長い歴史に裏付けされた遺跡や歴史的建造物が各地に残っています。そもそもハロウィンは太古のケルトの祭りって知ってました?
ケルト人は大胆で誇り高く、機知に富んだ陽気な性格で、深く心に訴えかける音楽、詩、美術、文学を育んできた民族です。人気映画ハリーポッターに登場する魔術師を生んだ数々の伝説や神話の国であり、エンヤ、U2など、世界的なミュージシャンを生んだ国でもあります。
こうしたケルトの文化に触れる行程を選択することが大切です。
例えば、田舎の町でパブ巡りをしたり、アイリッシュダンスを鑑賞したり、世界記録で有名なギネス・ビールのギネス・ストア・ハウスを訪問したり、アイルランドでしかできない体験をしたいものです。
アイルランドは個人旅行をおすすめ
アイルランドはそもそも大観光地ではありません。ですから、お決まりの定番観光ルートなどは存在しません。ガイドブックでいろいろな町や観光地を紹介していますが、中には実際よりも過剰に評価されている町も少なくありません。「地球の歩き方」に載っている町すべてがおすすめの町ではありません。「できれば行きたい」「興味があれば行ってみたい」くらいのレベルの町を訪問すると、少々失望することもあります。
そういう意味でも団体旅行のような、できるだけたくさんの町に行くツアーは避けた方がいいのです。
アイルランドの団体ツアーは催行率も低いため、ツアーキャンセルになることもしばしば。そうするとやはり個人旅行が一番ですね。行きたい町を絞って、ゆったりと観光する。そのような旅のスタイルがアイルランドに最適です。また、先程の項目でも話したとおり、アイルランドでしかできない体験はぜひ加えたいものです。
個人旅行はアイルランドを専門にしている旅行会社に相談をし、数あるモデルコースの中から自分に合うようにカスタマイズしてもらってください。アイルランドに詳しい担当者を指名できるような旅行会社がベストです。
アイルランドらしさが残る西部アイルランド
アイルランドへ行くなら西海岸は必見です。西部にこそ本当のアイルランドの文化が残り、アイルランドのよさが味わえるからです。イギリスの植民地政策の際、土地が豊かな東海岸にはイギリス人が暮らし、土地が痩せた西側にはアイルランド人が強制的に追いやられたという歴史があります。アイルランド色の濃い文化やゲール語(アイルランド語)を日常的に話すエリアは西部にあるのです。自然の美しい絶海のアラン諸島のイニシュモア島や地の果てを思わせるモハーの断崖、美しい山や湖と素朴で優しい人々の暮らすコネマラ地方など、見どころを観光する拠点がゴールウェイです。
ゴールウェイへは、ダブリンから列車で2時間半の場所にあるアイルランド西部の中心都市です。色とりどりに塗られた建物がとても可愛らしい町並みです。町が大きすぎず、小さすぎず、居心地のいい広さです。ゴールウェイでは観光客向きと言うわけではなく、日常的に地元のアイルランド人や世界からの楽器演奏者たちがセッションしています。アイルランドではパブは立派な文化の1つ。家族、友達が集う社交的な場所となっているのです。フレンドリーな人の多いゴールウェイでは地元の人たちとの自然な出会いも楽しみです。
西部アイルランドのモデルコース
それでは西部アイルランドに行くモデルコースをご案内しましょう。
★日本→ダブリン1泊→ゴールウェイ1泊→イニシュモア島1泊→ゴールウェイ2泊(モハの断崖、バレン高原観光)→ダブリン1泊→機中泊→日本
オイルドセーターとして知られるアランセーター。このセーターの名産地がアイルランドのアラン諸島です。その中でもゲール語で「大きな島」を意味するイニシュモア島に宿泊します。ホテルはなく、B&Bに宿泊です。ここは日常的にゲール語が話され、アイルランドの故郷的存在です。断崖絶壁の海岸や古代遺跡まであり、荒涼とした景観とともに心に残る場所です。
★日本→ダブリン1泊→ゴールウェイ2泊(イニシュモア島観光)→コネマラ地方観光(カイルモア修道院他)→コング1泊→モハーの断崖→バンラッティ城→キンセール1泊→コーク1泊→機中泊→日本
アイルランド西部を中心にアイルランド南部の中心コークにまで行くコース。少々ハードですが、アイルランドを1周するのに最適です。コネマラ地方もディープなアイルランド・エリア。ここも日常的にゲール語を話す人々が住んでいます。アシュフォードキャッスルがあるコングの町ではB&Bに宿泊します。航空会社はKLMで。帰りコークからの1回乗継便で日本に帰れます。
体験型のアイルランド西部の旅
アイルランドで一番アイルランドらしいエリア、それが西部です。まさにヨーロッパの辺境ともいうべき田舎です。そうしたディープなアイルランドをより知るには体験型ツアーが最適です。下記のような、西部アイルランド体験ツアーをおすすめします。
★ゲール語圏の超田舎の民家にホームスティ。家庭料理レッスン、超ローカルパブも体験 ケルトの暮らしを満喫するツアー
日本→機中泊→ダブリン1泊→ゴールウェイ1泊→カイルモア修道院他観光→コネマラ地方の田舎の村でホームスティ1泊→ゴールウエィ1泊(イニシュモア島観光)→ダブリン1泊→機中泊→日本
★アイルランドの田舎生活と自然を体感 コネマラ地方の牧場民宿スティとソーダブレッド作り体験
日本→機中泊→ダブリン1泊→ゴールウェイ2泊→コネマラ地方の牧場民宿1泊→ソーダブレッド作り体験→コネマラポニーの乗馬体験または伝統のカラというボートを使って釣りを体験→ゴールウェイ1泊→ダブリン1泊→機中泊→日本
北アイルランドにも行ってみたい
イギリスの一部である北アイルランドの首都ベルファスト。1970年から1980年台、北アイルランド紛争は大きな世界的な問題でした。かつてはテロという言葉は北アイルランドのためにあると思われる時代もありました。しかし、1998年和平合意が決まり、現在のベルファストはとても落ち着いています。唯一街のあちこちに描かれたウォールアートだけが、少し戦争の名残を感じさせます。また、ベルファストと言えばあのタイタニック号が造船された土地でもあります。2012年、タイタニックの100周年に建てられたタイタニック・ベルファストは町のシンボル的存在のユニークな建物です。内部では映像やアトラクションを通してタイタニックの豪華さを体感できる仕組みになっていて、その惨状に触れることもできます。映画を観たことがあれば、その感動は倍増するはずです!
巨人フィン・マクールが造り上げたという伝説を持つ海岸、ジャイアンツ・コーズウェイ。全長8kmほどにも及ぶこの世界遺産の海岸線には、六角形の玄武岩の石柱が4万本以上も立ち並んでいます。なんとこの景色は人間の手によって出来たものではなく、氷河とマグマが何万年もかけて生み出した自然現象なのです。まさに“巨人の通り道”という名にふさわしい大自然の驚異に息を呑むこと間違いなし!また、この海岸を訪れる際は、是非キャリックアード吊り橋にも足を運びたいところ。元々、鮭の漁に使われたというこの橋は、眼下に紺碧の海と断崖を臨むことができるちょっぴりスリリングな観光地。吊り橋からの眺めは絶景で、一度は訪れておきたいスポットです!
北アイルランドにも行くおすすめルート
ベルファストはロンドンからフライトもありますが、ダブリンからバスでわずか2時間。北アイルランドはアイルランドと一緒に周遊するのが正解です。モデルルートは下記のとおり。
★日本→機中泊→ダブリン→ベルファスト2泊→ダブリン2泊→機中泊→日本
ダブリン空港からベルファスト市内まで空港バスが出ていて、それを利用します。ベルファストでは1日ジャイアンツ・コーズウェイのツアーに参加しましょう。また、ベルファスト市内ではタイタニック・ベルファストやウォールアートにはぜひ行ってみたいところ。
ダブリンでは、聖パトリック大聖堂、トリニティ・カレッジなどの市内の見どころ以外に、ニューグルンジ遺跡、タラの丘など郊外にも行くべき場所があります。ギネス・ストアハウスの訪問とアイリッシュダンスの鑑賞は忘れずに。
★日本→機中泊→ダブリン→ゴールウェイ2泊→ダブリン→ベルファスト2泊→ダブリン2泊→機中泊→日本
これはアイルランド一周コース。ゴールウェイでは、イニシュモア島ツアーの日帰りツアーに出かけてみたいものです。