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1978年から1990年まで鎖国を続けていたというユニークな国があります。そんなに昔の話じゃありません。その国の名はアルバニア。バルカン半島にあって、その名前も存在も知らなかった方が多いかと思います。ユニークな風景を見せてくれる街並みや古代の遺跡、美しい海に面したリゾート地など、観光地としての要素はふんだんに存在しています。その中に交じって、この国にはとっても不思議なものがありました。国中で見かけるのが、まるでたこ焼きのようにポコポコ丸い不思議な物体。大きいのや小さいのがいっぱいあります。一体この正体とは?
面積 | 28,700平方キロメートル(四国の1.5倍ほど) |
人口 | 284万人 |
首都 | ティラナ |
言語 | アルバニア語 |
宗教 | イスラム教が6割近い、その他ローマ・4トリック等 |
通過 | アルバニア・レク |
時差 | 日本との時差は-8時間 (日本の方が早い) |
チップ | 枕銭に100レク程度 |
アルバニアってどんな国?
その正体はアルバニアが鎖国時代に仮想敵国から身を守るために作られたというシェルター。バンカーと呼ばれるトーチカで約40万個も!!この国を車で走っていると、あちこちで見つけることができます。自然の中にコンクリート製のたこ焼き状の物体は取って付けたようで、まさに鎖国時代の負の遺産。
アルバニアはバルカン半島の秘境と呼ぶにふさわしい国ながら、どこにあるかと言うと、ギリシャの北に位置していて国境を接しています。アドリア海を挟んで対岸にはイタリアがあるのです。全然辺境の地にあるわけではありません。
言葉はアルバニア語です。アルバニア語は世界中でここにしかないユニークなもので、アルファベットが36もあるという難解な言葉です。英語やイタリア語を話す国民も多いので、旅行者も安心です。治安が安定しているのも嬉しいところでしょう。宗教は半分以上がイスラム教徒ですが、南部にはアルバニア正教の信者やカトリック教徒もいるようです。
イタリアが近いため少々イタリアっぽいムードも見られます。アルバニア人は陽気で明るく、親切な人が多いのもイタリア人ぽいところです。イタリア料理も食べられるし、海に面しているためシーフードも楽しめます。
首都ティラナ市内では美しいモスクなどが見どころです。郊外に足を延ばせば、世界遺産のブトリント遺跡や、南部の「石の町」と呼ばれる世界遺産の町ジロカストラなど観光資源もいっぱいです。様々な見どころについてはこの後ご紹介いたしましょう。
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鎖国していた歴史を持つ謎多き国。国がねずみ講をしていたってホント?
アルバニアは第二次世界大戦が終わった後、共産主義国家になりました。その後中ソが対立した時代に、唯一中国と仲が良かったのがアルバニアでした。ところが毛沢東が亡くなり文化大革命が終わり、中国が改革開放路線に転換すると、中国とも仲たがいをしました。そして独裁者だったエンヴェル・ホッジャのもとで1978年から1990年までの長きにわたり、すべての国と鎖国関係にありました。鎖国時代には、国防のためにソ連などを仮想敵国として、攻め込まれた場合のためにたこ焼き状バンカー(トーチカ)を国中に作ったのです。1人から3人用の小さいものもあれば時々見かけるのが5-6人は入れそうな「ママバンカー」と呼ばれる大きなたこ焼き。今なおどれもがそのまま放置されているのは、コンクリートで頑丈に作りすぎて壊すこともできないためのよう。この国がどれだけ近代化してお洒落に変身しても、バンカーがある間は皆が鎖国時代と言う暗い過去を忘れることはないでしょう。
また独裁国家の時代には、アルバニアはなんと世界初の無神国家となったのです。どんな宗教も信仰しないという意味で、独裁者のエンヴェル・ホッジャによって狂信的な無神論が強制され、国内の宗教活動はすべて禁止されたのです。
また驚くべきことに、政府がねずみ講をした国としても、歴史上類を見ない国となりました。国によって多くの国民が損害を被ったわけです。
これらのことから、アルバニアという国がいかに変わった国だったかがわかりますね。すべてが過ぎ去った暗い過去であり、現在は普通のちゃんとした国であることを願います。
2つの世界遺産 「千窓の町」ベラット(ベラティ) vs 「石の町」ジロカストラ
アルバニアの観光において、見どころがいくつかありますが、見逃せない2つの町があります。ともに世界遺産である、ベラット(ベラティ)とジロカストラです。
2008年に世界遺産登録されたベラットの見所は2つ。1つは城。紀元前4世紀に砦は築かれ、現在も多くの人が生活しています。城内にはいくつか教会があり、その中の生神女就寝教会は現在「オヌフリ・イコン博物館」として公開されており見ごたえがあります。2つ目は「千の窓の町」と呼ばれるゴリツァ地区。斜面を埋め尽くすようにレンガ色の屋根と白い壁の家が建ち並んでいます。博物館都市の名にふさわしい景観です。宮崎駿監督の映画に出てきそうなメルヘンチックな町です。
南部に位置し、山麓に広がるジロカストラの町もまた必見です。「石の町」との呼び名も高い美しい石造りの町並みは情緒満点なのです。オスマン帝国時代に建てられ、旧市街には城塞や市場、アルバニア南部ならではの灰色の石葺屋根の伝統建築の家並みが斜面に立ち並んでいます。城は渓谷や町を見渡す丘の上に位置し、かつての要塞としての役割を果たしていたそうです。
町は旧市街と新市街に分かれています。旧市街をそぞろ歩いていると、レトロな店先にアンティックなど土産物が並び、古びたカフェのテラスで地元のおじさんたちがカフェを飲みつつ話をしたりゲームに興じていたり。ガタガタの石畳の坂道は、風情がある分暮らすには大変そうです。坂の上り下りも厳しく、散歩でもフーフー息が切れてしまします。
私が泊まったホテルは小さい家族経営のペンションでした。オスマントルコ時代からのインテリアはムード満点。天井の木の細工やガラスのランプシェードも凝っていて素敵でした。朝食は家族総出でおもてなししてくれました。パンと手作りのイチジクジャムとゆで卵の質素な朝食ながら、ご家族の優しいもてなしに心がぽっかり温まる気持ちでした。
様々な時代の遺跡がミックス 世界遺産のブトリント遺跡
古代ギリシャ時代の遺跡、そしてローマ時代の遺跡、その後中世の時代の遺跡…これらが融合して出来上がったユニークな遺跡がアルバニア南部に位置するブトリント遺跡です。 紀元前6世紀から紀元前5世紀ころ、古代ギリシャの植民都市として栄えたブトリント。丘の上にはアクロポリスの神殿が建てられ、下には円形劇場や町が建てられました。
その後、紀元前2世紀ころ、古代ローマの時代になると、公共浴場や競技場が増設され、円形劇場も拡大されます。後5世紀になると、ビザンツ帝国の支配下で、礼拝堂や聖堂が新たに建設されました。現在では世界遺産に指定され、多くの観光客に人気のスポットとなっているのです。
2005年に建てられた小さなミュージアムがありました。中でも印象的だったのは、ギリシャ時代の美しい彫像。ただし頭がありません。頭はかつてイタリア人探検家が持ち帰ろうとして、飛行機事故で無くなってしまったそうです。
遺跡で見学していると、地元の観光客に何度も声をかけられました。一緒に写真を撮ってほしいと言うのです。日本人が珍しいようで、いろんな質問もされました。お隣のギリシャだったら日本人など珍しくもないだろうに、さすがは長く鎖国していた近くて遠い国アルバニアです。
首都ティラナと城跡が残る郊外のクルヤ
長い鎖国状態であったアルバニア。市場経済の波に取り残されたこの国の首都ティラナは巨大な企業の広告やネオンに輝くきらびやか看板などもなく、美しさもありながら、どことなく共産主義時代から時が止まったような印象を残す街です。もう一つ、ティラナを街並みはほかの旧共産主義圏の都市と違う印象を抱かせるのは、街の広場に位置する大きな時計塔とそれほど目立たない石造りモスク。世界で初めての無神論国家を宣言したアルバニアですが、オスマン朝時代からの名残で現在もイスラム教徒が大多数を占めており、これらの建物はシンボルとしてアルバニアの人々に親しまれています。
中でも最大の観光ポイントはジャミーア・エトヘム・ベウトというモスクです。1793年から1821年にかけて建てられた壮大なモスクです。女性は頭にスカーフを巻いて入ります。内部の写真撮影は禁止ですが、壁面にびっしりフレスコ画が張り巡らされているのが圧巻。宗教が禁止された共産党時代にも、このモスクは博物館として生き残ったそうです。
ティラナの北47㎞に位置する小さな町クルヤは、クルヤ城と言う城跡が残り、かつてオスマントルコに対し抵抗を続けた民族抵抗の地として知られています。
観光の合間にバザールに立ち寄って民芸品などの土産物を物色できるのも楽しみです。
サントーマスデーのお祭りの日にアルバニア人家庭にお邪魔しました!
南部にある海辺の町サランダから山の上の方にあるガイドさんの実家に連れて行ってもらいました。アルバニア人の家庭訪問です。イースターの1週間後にあたる4月26日。サントーマスデーという大切な祝日で、家族や親せきの人々が家に集まってご馳走を食べるておられるところにお邪魔しました。山の上の平屋建ての1軒屋には広いリビングがあって、とても優し気な心温かい人々が、私たちの訪問を心から歓迎してくれました。訪問者をもてなす料理として、キョフテという肉団子やホウレン草のパイ、トルコ風の粉をまぶしたまんじゅうのようなお菓子に加え、真っ赤に塗られたイースター卵もありました。どれもがお母さんの手作りで心のこもった料理ばかりで、素朴で味わい深いのです。とりわけ牛肉のキョフテは香ばしくて美味しいので一緒に行った娘が10個も食べてしまい、お替りのお皿を持ってきてくれたほど。
おじいさんたちはアルバニアでよく飲まれる蒸留酒「アラキー」を小さなグラスに注いでしきりに乾杯していました。3年前に地震で家が壊れ、とりあえず平屋で作ったけれど、お金ができたら今度2階も作るそうです。
この周辺に教会が多いことを聞くと、お金持ちの家庭では各家庭に1つの教会を管理する風習があるそうで、こちらの家族もアルバニア正教会の教会を一つ管理しているとか。
またギリシャ国境に近い地域なので、ギリシャに働きに行っている人もいるそうです。鎖国の時はあり得なかったことも、当然のことながら今では普通に行き来できるのです。
アルバニアの食事
バルカン半島の国々の食事はトルコの食文化の影響を強く受けています。でもアルバニアの南隣りはギリシャ、そして海の向こうはイタリアです。なのでアルバニアの食文化はトルコ、ギリシャ、イタリアの影響を受けてかなり美味しいものが多いのです。島も海に面しているお国柄新鮮なシーフードも食材として料理に登場します。
メインとなる食事はランチで、ディナーはやや軽めです。様々な野菜と共にじっくり煮込んだ肉のシチュー、トルコ料理の影響でキョフテという肉団子も家庭料理でよく登場します。トマト、キュウリ、ピーマン、オリーブなど新鮮なサラダも並びます。 サラダには塩、オリーブオイル、酢またはレモン果汁のドレッシングをかけますが、イタリア風にバルサミコも。
アルバニアのレストランではメニューによくスパゲッティが入っています。時にはイタリアで修業したシェフの本格的パスタが出る店もありますが、当たりはずれがあるのも覚悟の上です。茹ですぎたり、塩辛かったり私もいろいろなパスタに出会いました。
海辺のレストランでは小エビの炒め物やグリルドフィッシュなど新鮮な魚料理も豊富で、観光客の口に合うものが多いのです。味付けが塩辛い店が多い印象だったので、もし塩分が強いものが苦手な人はあらかじめ塩控えめに(less salt)と頼んでおくのがいいかもしれません。
アルバニアへの行き方
アルバニアの玄関口は首都ティラナの空港です。日本からの直行便はなく経由便を利用します。便利なのはアリタリア航空ローマ乗り換え便です。羽田からローマまで直行で所要12時間55分。そこからティラナまでは1時間25分と、さすがに近いです。乗り継ぎ時間を合わせても17時間ほどで最短ルートと言えるでしょう。またターキッシュエアラインズのイスタンブール乗り換えもあります。羽田からイスタンブールまで12時間半。そこから1時間40分ほどですので、かなり便利ですが、イスタンブールでの乗り継ぎ時間が長い便になる見込みです。
空路以外でも周辺国から陸路で出入国するプランも可能です。北に位置するモンテネグロのボドゴリツァからバスや専用車利用で入ったり、東に位置するマケドニアのオフリッドへバスや専用車で抜けたりも可能です。
入国に際してビザは不要です。パスポートの残存が3か月以上あれば簡単に行ける国なのです。通貨は独自のものでレクを使用。回りの国で言えばギリシャもコソボもモンテネグロもユーロですが、マケドニアなどと共に独自通貨を使用する国々も残っていて、アルバニアもそのひとつです。
アルバニアのツアー
アルバニア1カ国を訪れるツアーもありますが、大体周辺国を一緒に周遊するのが一般的です。アルバニアと一緒にマケドニア、コソボ、モンテネグロなどを一緒に9日間くらいで周遊するコースが一般的です。よってアルバニアはせいぜいティラナに2泊してハイ出国と言うパターンになるのです。一方アルバニアだけのツアーは、首都ティラナと共にジロカストラやブトリント遺跡などを6~8日間くらいで観光します。
そのようにアルバニアの見所は他にもたくさんありますよね。いろいろ好きなように観光したいとなれば、自分だけのオリジナルプランを組むしかありません。もともと個人ベースのツアーを組んでいる旅行会社を探し、そこで組んでいるいくつかのパターンをベースに、希望のプランにアレンジしてもらうのがもっとも賢明なやり方です。
まだまだ日本ではマイナーな秘境的存在のアルバニア。そんな国の手配ができる旅行社は限られています。アルバニアを含んで個人ツアーを展開している会社で、実際にアルバニアへ行ったことのあるスタッフがいるところで、いろいろアレンジしてくれる会社を探すことが必要でしょう。
基本団体旅行の会社ではそうしたアレンジは不可能でしょう。またアフターコロナの時代において、そもそも団体旅行のような三蜜は避けたいところですね。個人旅行なら一人旅もよし、2-3人の友人との旅もよし、家族連れもよし。安心して旅行が楽しめるのです。信頼できる担当者にベストプランを組んでもらいましょう。きっと秘境の国も身近な存在になる旅ができるはずです。
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