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日本から見て地球の裏側に位置し、あまり馴染みの無い国トリニダードトバゴはカリブ海に浮かぶ比較的大きな島国です。カリブには30の主権国家、海外県、属領がありますが、正直地図上で見ただけでは「どこも同じようなものなんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。
しかし実際に訪れてみると国の数だけそれぞれ違った魅力を持つカリブ海諸国。トリニダードトバゴはその中でもとりわけユニークな国の一つです。
今回はそんな未知なる国トリニダードトバゴに迫っていきたいと思います!
トリニダードトバゴってどんな国?
カリブ海最南端に位置するトリニダードトバゴ。1日あれば1周できるような小さな島国が集まる中で、この国の規模は群を抜いています。トリニダードトバゴの面積は千葉県よりやや大きい約5,000㎢。人口も100万人を超えており、まさにカリブを代表する島国と言えます。
そんなトリニダードトバゴの民族構成は非常に特徴的。元々イギリス領だったこの国では、国民の大半を植民地時代に農園労働者として連れてこられたインド系の人々と混血系が占めます。そのためトリニダードトバゴの国民食はインドでもよく食べられるカレー風味のロティ。カリブ海に居てインドらしさを感じるとは…なかなか面白い経験です。
なんとなくカリブ海諸国と言うと「海が綺麗で陽気な場所」といったような、同じような印象を抱きがちですが、トリニダードトバゴはその広い国土や民族的な背景から、ユニークな文化を持つ国です。
特にトリニダードトバゴを語る上で外せないのが「鳥」。なんと国内に約430種類もの鳥が生息していて、この規模の国土でこれだけの鳥が見られるのは非常に珍しいのだとか。そうした理由からトリニダードトバゴはバードウォッチャー達の間でもメッカ的存在になっており、それぞれの鳥専門のガイドもいると言うから驚きです。
トゥリニダーエントバーゴって何?
トゥリニダーエントバーゴ…お察しの通りトリニダードトバゴのことなのですが、実はこれは現地訛りの言い方。トリニダードトバゴだけにとどまらずカリブ海一帯ではこうした現地語訛りの英語がよく話されます。隣国のバルバドスという国も、一般的な英語では「バルベイドス」という発音ですが、現地訛りになると「バルビードス」。発音はもちろんアクセントも違うことがあるので、聞き取りにくく感じることもあるでしょう。
そして先ほどもお話した通り、トリニダードトバゴの人口の大半を占めるのはインド系や混血、そして同じく植民地時代に労働者として連れてこられたアフリカ系です。そのため公用語は英語ですが、ヒンディー語やフランス語、クレオール語などが使われているのも特徴的。宗教に関しても同様で、国民の60%はキリスト教を信仰していますが、次いで多いのがなんとヒンドゥー教。インド系の人が人口の3割以上を占めているので当然と言えば当然ですが、本国から遠く離れたカリブの島でヒンドゥー教が信仰されているとはなんともユニークです。
治安のことを心配した方がいい国は、カリブ海ではハイチと並びここトリニダードトバゴも当てはまります。なんとなくカリブの穏やかなイメージがあるかもしれませんが、他のカリブ諸国と比べても大きな街である首都ポートオブスペインは治安が悪い傾向にあります。なのでどの国にも言えることですが、とりわけこの街では貴重品は持ち歩かない、夜は出歩かないなど最低限自衛しておくことが重要です。出来ればガイド付きで観光した方がベターだと、現地在住の日本人がアドバイスしてくれました。
トバゴ島で民泊した両親の話
トリニダード島から飛行機で30分ほどの場所にあるトバゴ島。首都のあるトリニダード島よりも小さな島で、サンゴ礁と青い海が美しい島です。
私自身はトバゴ島に降り立ったことはないのですが、私が生まれるよりも前に両親は訪れた経験があり、そこでの思い出は一生忘れられないのだと語ります。特に宿の予約もせず行き当たりばったりの旅をしていた2人。その日は空港で客引きをしていた女性の宿で泊まることにしたのだとか。空港から車で約30分、一面畑が広がるような田舎町にあるのは決して綺麗とは言えない宿。夕飯も出ないと言われ、仕方なく歩いて1時間ほどのビーチへ食べに行ったのでした。
しかし食べ終わって帰路につく頃には辺りは真っ暗。街灯も無く道も分からず2時間以上も島内を彷徨ってしまいます。道を尋ねようにも人もおらず困り果てていたところ、現れたのは1台の車。ちょうどいい、この人に道を聞こうと近寄ってみると、なんと運転していたのは宿泊先の奥さん。あまりに帰りが遅いからと心配して探しに来てくれたんだと言います。
出会ったばかりの日本人にこんなに親切にしてくれるなんて…と痛く感激した2人。以来両親にとってトリニダードトバゴは特別な国なのです。
スチールパン
カリブ海というと陽気な音楽を想像する人も多いでしょう。実際さまざまな島国で特徴的な音楽を楽しむことが出来るのですが、その中でもトリニダードトバゴの音楽は非常にユニーク!ダンス音楽カリプソとインド系の音楽ソカがあります。そしてそんな音楽を盛り上げる際欠かせないのがスチールパンと呼ばれる楽器の存在。
産油国であるこの国で、廃棄されたドラム缶の底をメロディーが出るように加工したのがきっかけだというスチールパン。ただ廃材を利用しただけでしょ?と侮ることなかれ。スチールパンは今やこの国を語る上で欠かせないほど重要な存在で、「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器の発明」とも称されているのです。
ピアノのように鍵盤があるわけでもバイオリンのように弦があるわけでもないので、なんとなく単調な音しか出なさそうに思えますが、実際にスチールパンの音を聴いてみると驚くほど繊細です。サイズや叩く位置で全く音色が違い、その絶妙な違いでメロディーを奏でます。そんなスチールパン奏者にとっての大舞台は、この国自慢のカーニバル。リオのカーニバルやベネチアのカーニバルと並び、世界三大カーニバルの1つに数えられているトリニダードトバゴのそれ。世界中から多くの人が集まって踊り狂い、スチールパンの音色が鳴り響く…その熱気は想像を絶します。トリニダードトバゴへ訪れた際は是非一度その音色に酔いしれてみては?
カロニー スワンプ バード サンクチュアリ
いくら鳥の楽園と言えどもその全てを鑑賞するなんて不可能。では一体どの鳥にスポットを当てて巡ればいいのでしょうか。冒頭で述べたようにトリニダードトバゴには430ほどの鳥類が生息していますが、その中でもとりわけ人気が高いのが国鳥スカーレットアイビスです。
スカーレットアイビスとはその名の通り赤い姿が特徴的な鳥。彼らが棲む湿地帯ではカニなどの甲殻類が多く生息しているのですが、なんでもそのカニを食べることで真っ赤な姿になるのだとか。
カロニー・スワンプ・バード・サンクチュアリは、そんなユニークな生態をもったスカーレットアイビスを見ることが出来る国立公園。水路をボートで進んでいくジャングルツアーも催行していて、さまざまな鳥類や水辺の生き物に出会えます。
そしてメインイベントは夕暮れ時。この時間帯になると群れで移動するスカーレットアイビスの姿を目視で確認出来るのです。遠くからでもハッキリ分かるほどの鮮やかな赤にボートからは歓声が。スカーレットアイビスが止まった木はまるで花が咲き乱れているかのよう。肉眼でも見られますが、どうせなら双眼鏡でじっくり観察するのがオススメです。
ASA・ライト・ネイチャーセンター
トリニダードトバゴ最高峰のアリポ山の中に、「ASA・ライト・ネイチャーセンター」と呼ばれる自然保護区があります。ここはまさに鳥類の宝庫とも言うべき場所で、世界中のバードウォッチャーがこぞって訪れる地の一つ。6㎢を誇る敷地内には川が流れ、緑豊かなトリニダードトバゴの自然がそのまま残っています。
ここでは617種の蝶、400種の鳥、97種の哺乳類、80種の虫、そして2000を超える植物が生息していると言うから驚き。私は数時間立ち寄ったのみでしたが、敷地内にはいくつか宿泊施設の準備もあります。熱心なバードウォッチャー達はこの場所で連泊し、気のすむまで鳥たちの観察に明け暮れるようです。
共有スペースのラウンジにはハチドリの餌である砂糖水がセッティングされていて、至近距離で彼らの食事風景を楽しむことも可能です。まるで蜂のようにブンブンと羽音を立てるハチドリは、なんと1秒間に80回も羽ばたいているのだとか。一般的に翼が大きい鳥ほど羽ばたきの回数は減るようなので、世界最小の鳥であるハチドリはそれだけたくさん動いていないといけないわけですね。
勿論ハチドリの他にもカラフルで珍しい鳥がたくさん。せっかく訪れるなら望遠レンズを用意してその姿を写真に収めるのがオススメです。
トリニダードトバゴの行き方
日本からトリニダードトバゴへはアメリカ経由が一般的です。ユナイテッド航空のワシントン(ダレス空港)乗り換え便が便利で、羽田からワシントンまではユナイテッド航空の便名ですが、機材は全日空の共同運航便を利用します。ワシントンからトリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペインまでは直行便もあります。ユナイテッド航空はこのルート以外にも2回乗り換え便のルートがいくつかあるので、立ち寄りたい都市に応じて選んでみてもいいでしょう。
またユナイテッド航空以外だとアメリカン航空で行く方法もあります。ダラス乗り換えでマイアミへ飛び、そこから首都ポート・オブ・スペインまで向かうルートです。その他にもエアー・カナダでトロントから飛ぶ方法も良いでしょう。
トリニダード・トバゴはカリブ最南端の島。プエルトリコ以南のカリブの島々の中では面積も人口も多く、南カリブの中心都市とも言えます。それゆえカリブ海のハブ都市であり、ポート・オブ・スペインをベースにアメリカ、カナダ、イギリス、周辺のカリブ海の島々はもちろんそれ以外にも中米、南米へのフライトがあります。カリブ海の都市で、中米や南米との直行便があるのは貴重な存在です。カリビアン航空(BW)がポート・オブ・スペインをハブとして運行しています。なおポート・オブ・スペインからトバゴ島のスカボローへは国内線の便があります。
トリニダードトバゴのツアー
トリニダード・トバゴのツアーを設定している会社は日本ではほとんどありません。いくつかの辺境専門の旅行会社が1名から催行の個人旅行を設定しているくらいです。ファイブスタークラブもそういう会社の1つです。こんな辺境の国にも訪問したことのあるベテランスタッフが揃っています。もしトリニダード・トバゴへ行きたいのであれば問い合わせしてみるといいでしょう。1カ国だけなら6日間くらいからツアーの設定があります。
人気なのは周辺の国とのコンビネーションで2カ国または3カ国周遊です。カリブ海諸国ではバルバドス、セントルシア、マルティニークなどと距離的にも近く、組み合わせやすくなっています。
また音楽つながりでジャマイカとのコンビも楽しいです。トリニダード・トバゴでスチールパン練習場を訪問、ジャマイカでレゲエツアーに参加など、カリブ音楽を目一杯楽しむコースも興味深いです。また南米の秘境国ガイアナとのコンビネーションもユニークです。
ファイブスタークラブはアレンジが得意なので、自分流の旅を作り上げることもできます。例えば、トリニダード・トバゴとコスタリカの2国周遊ジャングルツアーというのも一案です。世界の国々の訪問国を増やした人は、辺境旅行を得意とするファイブスタークラブのような会社に相談してはいかがでしょうか?