南米大陸の北部にギアナ3国と呼ばれる地域があることをご存知でしょうか。今回私が紹介したいのがそのうちの1つ、フランス領ギアナ。国名を聞いて「ん?フランス領?」と思う方もいるかもしれません。その通り、このフランス領ギアナは南米で唯一未だ植民地である、言わばフランスの超・超「飛び地」の領土なのです。
とは言っても我々日本人には全く馴染みのない国。実際私も行くことが決まるまで南米にフランスの領土があることすら知りませんでした。そんな秘境中の秘境であるこの国ですが、実は隠された魅力が…とは、残念ながらいきません(笑)観光資源に乏しいフランス領ギアナ。一体どんなところなのでしょうか?
フランス領ギアナってどんな国?
フランスの海外県、フランス領ギアナ。南米で最も小さいこの国は、同時に南米で唯一、ヨーロッパ入植時代から続く植民地でもあります。世界一の観光大国で日本中の女子の憧れでもあるフランスですが、ヨーロッパの本国とは違いこちらの海外県はまるで正反対の国。世界遺産はおろか綺麗な町並みやビーチもなく、南米の中でも忘れ去られたように知名度の低い場所です。
そんなフランス領ギアナですが面積は大体北海道と同じくらい。公用語はやはりフランス語ですが、英語も通じます。良く言えばフランスのド田舎に来たような感じでしょうか…。町並みは古いですがユーロも使えて、VISAも不要です。
また、辺境旅行において大きな問題になる食事ですが、フランス領なので心配無用。特にパンのレベルが高いのがフランスらしさを感じられるはずです。
フランス領ギアナへの行き方
南米とは言えフランス領であるため、フランス領ギアナの首都カイエンヌへの行き方はフランスを経由するのが一般的。アメリカのマイアミを経由する方法も無くはありませんが、マイアミまで乗り継ぎ1回してそのままマイアミで1泊。そこから3ヶ所の経由でやっと到着するので良いルートとは言えません。また、マイアミまでと以遠で2つの航空会社を利用することになるので割高になってしまいます。
それに引き換えフランス経由であれば、エールフランス便を使い乗り継ぎはパリでの1回のみ。到着はパリのシャルルドゴール空港、出発はオルリー空港であるため、空港間を移動する必要がありますが空港のシャトルバスを利用すれば楽ちんです。
機内食が美味しいことでも知られるエールフランス。長時間のフライトであればその分機内食もたくさん出るので、どうせなら美味しいものを食べたいですよね。また、エールフランスは日本語の映画もたくさん扱っているほか、パリの空港は設備も整っているので、長い飛行時間や乗り継ぎ時間も退屈せずに過ごせるはずです。
フランス領ギアナのツアー
日本にはほとんどツアーがないフランス領ギアナの旅行。それもそのはず、フランス領と言っても目立った魅力は無く、決して観光客向けとは言えないこの国。しかし辺境を取り扱うほんの一部の旅行会社ではフランス領ギアナのツアーを催行しているところもあり、もし旅行を検討しているならそういった旅行社を利用するのが便利でしょう。
首都カイエンヌをはじめ見どころの無いフランス領ギアナは、少なくとも他に2,3ヵ国一緒に旅するのがオススメ。特にフランス領ギアナと共に「ギアナ3国」として数えられるスリナムやガイアナは、3国間の交通も便利なので一緒に巡るのにピッタリと言えます。
日本でギアナ3国を扱う数少ない旅行社のうち、そのほとんどが団体ツアーで年中催行しているわけではないのですが、個人旅行でいつでも催行しているところもあるので、探してみるといいでしょう。
観光客が居ないのが最大の魅力
「観光客が居ないのが魅力」とは国としては終わっている気もしますが、実際フランス領ギアナはその見どころの無さゆえ全くと言っていいほど観光客が訪れない国なのです。もしかしたら「今もフランス領なら綺麗な町並みとかあるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、世界遺産でもない古い建物が国によって保護されるわけもなく…首都カイエンヌの町は朽ち果てそうな状態のまま放置されているのが現状です。
今回私たちは、フランス領ギアナに数えるほどしかいないガイドさんに観光案内をお願いしたのですが、この方も「ガイド業だけでは食べていけないので普段はバハマでダイビングインストラクターをして生計を立てているんだ」と教えてくれました。
かつては「エルドラド(黄金郷)」として各国が競って金を採掘していたという歴史もあったそうですが、今ではそれも下火になっているフランス領ギアナ。観光客で賑わっていないのはどことなく物悲しい雰囲気もありますが、逆に言えばどこに行ってもとても歓迎されるので、旅行客にとっては良い国と言えるでしょう。
主要産業はロケット産業!?
町も古くどこか廃れた印象を感じさせるフランス領ギアナですが、意外なことにロケット産業が盛ん。クールーと呼ばれる町には古めかしい首都の雰囲気とは対照的に超巨大な「ギアナ宇宙センター」があり、フランスやアメリカ、ロシアのロケット打ち上げ基地となっているのです。
なぜこんな辺鄙な場所に宇宙センターがあるのかというと、地震がなく赤道に近いこのギアナという国の立地がサテライトにピッタリだったのだとか。加えてクールーは海に面した町。仮にロケットの打ち上げに失敗してもそのまま海へ落ちてくれるので安心です。元はアルジェリアにあったそうですが、フランスから独立したのをきっかけに、こちらに移ってきたそう。今ではこのロケット産業が一番の収入になっているようで、積極的にロケットの打ち上げを行っています。
真っ赤な炎を噴出しながら打ち上がるロケットはもはや国の名物ショーのようにもなっていて、インパクト抜群。もしフランス領ギアナに訪れるならこのロケット発射日に訪れるのがいいかもしれません。
スリナムへの国境越えが楽しい
ここまで紹介してきたように、観光地として魅力に欠けたフランス領ギアナですが、実は隣国スリナムへの国境越えはとってもユニーク。首都カイエンヌから250km、車で3時間ほど走ったところに国境の町サンローラン・デュ・マロニが見えてきます。
ここでは、川やその対岸にあるスリナムを眺めながら食事ができるレストランがあり、美味しい魚料理などが味わえます。フランス領と言えども辺鄙な南米だしなぁとあまり期待していなかったのですがその味は想像以上に美味。やはり国境付近の人が行き来する場所なので特に美味しいレストランなのかも。
さて肝心の国境越えですが、目的地は川の向こう岸。残念ながら橋などはかかっておらず「どうやって移動するんだろうな~」と思っていたら、近くの小舟にどんどんスーツケースが運ばれていきます。えっ!これで国境超えるの!?今まで色んな国で国境越えを経験してきましたが、こんな方法は初めて。ひっくり返って水浸しになったらどうしようとひやひやしていましたが無事に対岸のスリナムへ到着。結果、フランス領ギアナで唯一と言っていい、印象的で面白い体験はこの国境越えになりました(笑)