目次
地球の果てにある氷でできた桃源郷。南極を一言で表現するなら私はこう言います。南極には世界中のどこを探しても存在しない、南極だけにしかない空気感が存在していました。そこにある大自然は本当にダイナミックで荒々しいのに、同時に清らかで優しく爽快感もあります。
言葉で言い表すには限界があるほどそれは素晴らしい世界。訪れる者すべてを幸せな気分にしてくれます。だから桃源郷。今回、コロナ直前の2020年2月、運よく南極を訪れることができたペンギン2号こと井原三津子が、南極観光のクルーズについていろいろ情報をお届けしていきたいと思います。
南極クルーズのおすすめは?
南極クルーズは私にとって長年の夢でした。念願かなって2020年の2月就航の船に乗ることが決まり、その夢をかなえるために私が動き出したのはちょうど出発の1年前、2019年の2月。南極へ行くためのクルーズ船の予約は、1年前からしないといけないというのは常識らしく、本当にギリギリで、私が予約した直後に目指すクルーズ船の予約は満杯となったそうです。
私の選んだのはチリ最南部の町プンタアレーナスからフライトで南極のキングジョージ島にひとっ飛びして、そこからクルーズ船に5泊して南極半島の島々を周遊する、「フライ&クルーズ」。南米と南極の間にはドレーク海峡があって、南極から船で海峡を渡るには2泊かかり、往復100時間がロスになる上に、外海とあって波が荒く45度も船が揺れるといいます。それは耐えられそうもないので、往復ともフライトの快適なプランにしたわけです。片道それでも2時間かかるクルーズ会社のチャーターフライトでした。
私が乗ったクルーズ船「ワールド・エクスプローラー号」は2018年末に出来た新型の船。耐氷船としては新しく豪華で、しかも機動力に優れた一押しの船…というのが船会社の宣伝文句。乗客は176名、乗員は105名、7階建ての快適な作りです。外観はメタリックでシャープな感じでちょっと軍艦のような色目。
20平方メートルのベランダスイート502号室が私のキャビンでした。5階の先頭部に位置して、狭いながらバルコニーが付いているので気分も爽快。新しいデラックス船だけあって、設備はしっかりしていてきれいです。冷蔵庫に巨大スクリーンTV、十分なお湯が出るゆったり広めのシャワールームも美しい!特大レインシャワーやスイスシャワーまで付いているので申し分なし。5泊するのでこの快適さは嬉しいものでした。
フライトで南極到着。そしてクルーズ船へ乗船
フライ&クルーズでの南極へのアクセスのところからご説明しましょう。
プンタアレーナスから南極のキングジョージ島までのフライトは天気に左右されるそうで、出発の正確な時刻も出発の朝にならないとわからないものでした。プンタアレーナスのホテル前泊の手配はクルーズ会社がやってくれているので、そこからツアーは開始です。
送迎もすべてついているので安心です。小型機と言っても60人乗りのクルーズ会社のチャーター機。2-3の配列で自由席。しっかりした軽食やジュース、ワイン、水などが出て、なかなかのサービス。着陸前になると、皆が持ってきた長靴に履き替え、クルーズ会社からプレゼントされた耐寒用黄色の分厚いパーカーを着込みます。皆さんお揃い。
そして一番大切なことがズボンやスパッツの上にゴアテックスなど防水防寒のズボンを履くこと。これを履いていないとクルーズ船に向かうゾディアックに乗船させてもらえないので要注意。無事フライトが着陸したキングジョージ島はすでに南極大陸の一部です。
南極大陸へ一歩、足を踏み入れた瞬間は感慨深いものでした。
・・・とはいってもここは南極大陸の端っこ。南極とひとくくりにしても、総面積は1,400万平方キロもあり、日本の面積の37倍なのです。クルーズで訪れるのはそのほんの先っちょの南極半島近海だけなのですが。
さっそく皆が一列になって約30分くらいで1.5㎞程の道のりを歩いてクルーズ船の待つ港を目指します。大きな荷物は別途運んでくれるので、手持ちのリュックだけを背負って歩きます。平坦な道のりだから思ったよりより楽でした。履きなれない長靴で同じ黄色のパーカーを着た乗船客が一列になってよちよち歩く姿は、遠くから見ればちょっとペンギンパレードのようだったかも。(笑)
着いたところに赤いライフジャケットが用意されていて、それの装着方法を習って付けたら、順番に10人乗りのゾディアックに乗って、いよいよクルーズ船に乗船です。船まで5分。ニコニコ笑顔のクルーの出迎えを受け、レセプションでクルーズのチェックインとなります。
ゾディアックでの南極観光の流れ
ゴム製のしっかりしたボートであるゾディアックに乗船してのアクティビティツアーはチーム分けして行われました。シール(アザラシ)、ホエール(クジラ)、ペンギン、アルバトロス(アホウドリ)の4チームです。私はアホウドリチームと決まりました。
できればペンギンチームとかがよかったけど、日本語がアホっぽいものの(笑)英語でアルバトロスは決して悪くないと思い直します。通常朝と午後に1日2回のアクティビティが行われます。乗船 初日の午後はオリエンテーションで、ランチの後はクルーズ中の注意事項やスケジュールなどの説明を聞いておしまい。
翌朝からはゾディアッククルーズ観光が始まりました。アホウドリチームが呼ばれたら、身支度を済ませ階段で3階のマッドルームへ向かいます。MUD ROOM。文字通りマッドルーム泥の部屋。ロッカーにキャビンナンバーが書かれていて、自分のライフジャケット長靴、そしてパーカーを掛けてあります。長靴を履いてパーカーを着込んで慣れないライフジャケットをスタッフに手伝ってもらい準備OK。
そうそう。忘れてはいけないのが最初に作ってもらった写真入りIDカードをパーカーの袖の透明ポケットに入れること。これで列に並んで順番にゾディアックに乗り込むのですが、その前に係員がIDのバーコードをピピッと読み込んで、行ってらっしゃいと挨拶してくれます。これで参加者の安否確認ができるのです。別のスタッフがライフジャケットの緩みなどもチェックして直してくれ、乗り込むのは2人がかりで手を取ってくれるので安心。
ゾディアッククルーズだけで氷山や氷河、氷塊を眺め、クジラやペンギンなどの動物を海にいながら見学するケースと、クルーズをしてからペンギンのいる島などに上陸観光する場合とがあります。上陸する場合も、ゾディアックは岸辺で待機しているので、船に戻りたい人はいつでも連れて帰ってくれるので何かと安心です。上陸するかどうか、どこへ行くかの最終決定はその日の朝となります。
ゾディアッククルーズでパラダイスハーバーへ
最高の天気のもと出かけたパラダイスハーバーへのゾディアッククルーズ。昨日は悪天候で船からの風景もパッとしなかったのがウソのよう。天気次第で風景が激変するのです。午前のアクティビティは上陸なしのクルーズのみ。ガイドさんはこの道19年のベテランでとっても親切なオーストラリア人女性のアニーさん。はっきりゆっくり話してくれるので英語も聞き取りやすくて助かりました。同じくオーストラリア人でガイドのリーダーであるデイビッドさんの奥さんだそうで、二人はいつも同じクルーズ船に乗船するらしいのです。素敵なご夫婦です。
ゾディアックはいつも同じグループで乗るやり方ではなく、毎回違うのでなかなか友達ができにくいのですが、総勢130人ほどなので顔馴染みはできて、食事の時にレストランで挨拶するような人も増えてきます。後でアニーさんのグループになったと言うと、他のガイドさんにもそれはラッキーでしたね、と言われました。それだけ人気があるのです。
アニーさんは日本が大好きと言ってくれるし、思いやりにあふれ、一緒にいるだけで安心感があって、ゲストは皆一体感ができて楽しいのです。ゲスト同志が知り合えるようにどこから来たとか順番に言い合ったり、ベストスポットでは交替で写真を撮ったりしてくれる配慮も嬉しいものでした。
パラダイスハーバーはかつて嵐の時に捕鯨船が一時避難した湾として知られています。抜けるような青空のもとあたり一面を取り囲むブルーと白の氷の世界。うっすらと中腹に白い綿雲がなびき、紺色の水面にくっきりと写し出す風景は絶景と呼ばずして何でしょうか?少しずつ崩れ落ちる氷塊がプカプカ漂っています。大きめの氷塊の上に寝そべる大きなアザラシの姿も見えます。ひたすらのどかで平和な風景。
この地の名前の通り、ここはパラダイスなのです。静寂の中で氷河の一部が崩れ落ちるドカーンという音が響きました。世界でもまれにみる氷の桃源郷。そんな時に同じゾディアックに乗っていたアメリカ人女性がぽつりと言いました。
「心が洗われるわね・・・」
誰もが無言でうなずいていたのです。
クルーズのハイライト ダンコアイランド
午後はダンコアイランド上陸観光。このツアーが滞在中で最高の体験ができた、まさにハイライトとなったのです。ダンコアイランドは全長1.6㎞ほどの島で、目の前に氷河や氷山が聳え、氷塊が浮かぶ絶景スポットです。上陸してみると、丘の上の方までたくさんのペンギンが群れています。外敵から身を守るためにルッカリーと呼ばれる集団を作って共に暮らすペンギンたち。
陸地では2本足でよちよち歩く姿が愛らしいのに、いったん海に入れば飛ぶように早くかっこよく泳ぐのには驚きます。まるでイルカのような泳ぎです。
ここ南極で最もたくさん出会うのが、体長60~70cmの両目を白い模様で結ばれくちばしがオレンジ色のジェンツーペンギン。
好奇心旺盛で、上陸して観察していると足元まで近づいてくることも。自分の通り道に人が立っていても、平気でやってきて、きょとんとした顔で見上げてどうしようか悩んでいる姿もめちゃくちゃ可愛い。ダンコアイランドを後に、ゾディアックは氷河と氷塊を縫うようにして走り、1時間ほどのクルーズが続きます。
エメラルドグリーンの氷塊の上に一頭の巨大な豹アザラシが!身体の柄が豹っぽい柄になっていて、300㎏もの迫力ある身体。でも顔は笑っているように見えて愛嬌のある表情。ところが実際は獰猛な豹アザラシ。この辺りの海に多くいるペンギンが彼らの主食なのです。目の前で飛ぶように機敏に泳ぎ回っていたペンギンが一頭の豹アザラシの餌食に。海面で繰り広げられるすごい光景に皆が凍り付きました。
その時後ろの方でバシャっとすごい音がして振り返ると、すぐ近くでザトウクジラがジャンプしているではありませんか!!静かだった水面にプハーっとクジラが3頭現れ、身体を露出して大きく持ち上げたかと思うとクルっと潜って大きな尻尾を見せてくれました。すごい迫力。
その向こうでは素晴らしいアーチ状の氷塊が写真を撮った次の瞬間にガラガラと崩れ落ちてしまったり。あまりにも見る者を釘付けにする光景が多すぎて、カメラをどこに向ければいいのかわからなくなってしまう私だったのです。今思い出しても、あれは夢の世界の出来事のようでした。
クルーズ船に関する情報〜食事やさまざまな楽しいイベントも〜
それでは、クルーズ船での滞在における知っとくと助かるあれこれをご紹介しましょう。
まず、ランドリーサービスは安くて早いので要チェック。朝出せば午後には戻ってきました。あまりたくさんの着替えを持参する必要はなかったと後悔。小型機のフライト時の軽量を心掛けるためにもランドリーサービスを利用するのが賢いやり方です。
クルーズ船内にはいろんな国のスタッフがいるのですが、私の部屋のキャビンスチュアーデスこと部屋係はミラさんというウクライナ人女性でした。最初に握手してあいさつ。とっても優しく親切な人。滞在中はいろいろお世話になりました!
WIFIは有料で最初に買ってバウチャーをもらいます。滞在中無制限に写真も送れるように200$で4GBというのにしたらとても便利でした。南極では間違っても機内モードをはずさないように・・・との注意書きがあちこちに貼ってあります。どこやらの衛星経由で間違ってメールなどしたら数千ドルの請求が来るそう。こわいこわい。
レストランはほぼ決まった時間に皆が一斉にレストランに入るシステム。私の乗ったクルーズ船では、朝食とランチはビュッフェで、ディナーはビュッフェだったりセットメニューだったり、屋外バーベキューの日があったり色々趣向が凝らされていました。
嬉しいのはその料理の味がいいこと。スープもビュッフェなのにいつも熱々なのが素晴らしい。スタッフはインドネシア人やフィリピン人などアジア系の人も多く、親しみやすいのがよかったです。
ある日のアラカルトディナーのメニュー。シーフードカクテルは海老、帆立、スモークサーモンにカクテルソースがかかった一品。ミネストローネスープ。サラダ。ソルベ。メインディッシュはビーフテンダーロイン。デザートはババロアかアイス。食後のコーヒーはラウンジで飲むこともできます。
乗船後オリエンテーションを行った広い会場で、毎夕いろんな講座が行われます。ガイドのアニーさんも南極講座を開いていました。ここに生息する動物の説明をする講座もありました。
名物イベントのひとつはポーラープランジといって南極の海に飛び込むというチャレンジャーなイベントです。人気者のガイドさんが嫌がっているのを無理やり飛び込ませられたりと言うポーズで笑いを取ったり、そのシーンを動画に撮ったりして、最後にスクリーンで披露していました。
下船前夜のオリエンテーションはスライドショーと動画も音楽付きで編集されており素晴らしくて感動的なものでした。動物のベストショットもプロが撮っているので最高のものでした。
7階にはスパがあって、サウナに入ったり個室でマッサージを受けられるのも素敵です。私が行ったときはセルビア人女性のセラピストによるマッサージで、本格的で上手でした。
船内で絵葉書を買ってスタンプを押し、住所を書いて箱に入れると1枚2ドルで南極からハガキが届きます・・・というので何枚か書いて自分や友達に送りました・・・・・が未だに届かない!コロナ禍で葉書も届きにくくなったのかも?
クルーズ船の設備
船内には展望ラウンジやフィットネスルーム、スパ・サウナ。プールやジャグジー、図書館、ウォーキングトラックなども完備していて、クルーズ中退屈することがありません。ブティックもあってお土産やクルーズで必要な防寒具やTシャツなどを買うこともできます。
キャビンの設備はとてもよくて、私の部屋はバルコニー付きだったので好きな時に空気を入れ替えられて外の風景を楽しんだりも思いのまま。室内にはクローゼットなど収納も多く、冷蔵庫、特大スクリーンのTV、コンセント類も完璧。カードをかざすだけのセイフティボックスも便利です。
ミネラルウォーターが毎日ふんだんに置かれ、湯沸かしはないものの、下のフロアーには熱湯やコーヒー、ティーサービスがあって、持参した保温ポットにお湯を汲んできて、部屋で日本茶やコーヒーを飲んだりするのも可能でした。希望なら持参したカップ麺なども食べられます。船内にはロクシタンスパがあるのでトイレタリーもロクシタン。ふかふかのバスローブも完備しているという徹底ぶりでした。
南極の基本情報
面積 | 約1,300万平方キロ 日本の国土の約36倍あります。 |
平均標高 | 2,010m |
最高標高 | 4,897m(ビンソンマッシフ山) |
年平均気温 | -10.6℃ |
最低気温 | -89.2℃ |
氷の量 | 約2,500万立方キロメートル 地球上の氷の90%が南極大陸にあります。 |
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
最高気温記録 °C (°F) | −14 (7) |
−14 (7) |
−26 (−15) |
−27 (−17) |
−30 (−22) |
−31 (−24) |
−33 (−27) |
−32 (−26) |
−29 (−20) |
−29 (−20) |
−18 (0) |
−13 (9) |
平均最高気温 °C (°F) | −25.9 (−14.6) |
−38.1 (−36.6) |
−50.3 (−58.5) |
−54.2 (−65.6) |
−53.9 (−65) |
−54.4 (−65.9) |
−55.9 (−68.6) |
−55.6 (−68.1) |
−55.1 (−67.2) |
−48.4 (−55.1) |
−36.9 (−34.4) |
−26.5 (−15.7) |
平均最低気温 °C (°F) | −29.4 (−20.9) |
−42.7 (−44.9) |
−57.0 (−70.6) |
−61.2 (−78.2) |
−61.7 (−79.1) |
−61.2 (−78.2) |
−62.8 (−81) |
−62.5 (−80.5) |
−62.4 (−80.3) |
−53.8 (−64.8) |
−40.4 (−40.7) |
−29.3 (−20.7) |
最低気温記録 °C (°F) | −41 (−42) |
−57 (−71) |
−71 (−96) |
−75 (−103) |
−78 (−108) |
−82 (−116) |
−80 (−112) |
−77 (−107) |
−79 (−110) |
−71 (−96) |
−55 (−67) |
−38 (−36) |
平均月間日照時間 | 558 | 480 | 217 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 60 | 434 | 600 | 589 |
出典1:Craft MAP
出典2:WeatherBase
出典3:Cool Antarctica
南極の大きさは・・?地球上の氷の9割が南極にある!
世界7大陸・・・・ヨーロッパ大陸、アジア大陸、アフリカ大陸、北米大陸、南米大陸、オーストラリア大陸、そして7つ目が南極大陸です。この7つの大陸の中で6番目に大きいのが南極大陸なのです。一番小さいのはオーストラリア大陸で、南極の約半分の大きさです。南極は1,400万平方キロで、日本と比較すると約37倍の広さです。
南極クルーズで一般的に私たちが訪れるエリアは、南米大陸からドレーク海峡を隔ててすぐに位置する南極半島とサウスシェトランド諸島といったごく限られたエリアにすぎません。南極の北東部に位置する昭和基地とか、南極点などはほど遠い場所なのです。
全体の98%以上が氷に覆われた広い大陸が南極です。地球上のすべての氷の9割が南極にあると言われているのです。地表が表れているのは南極半島などの限られたエリアのみ。平均して氷の厚さは2,300mに及び、とりわけ大陸東部の氷床は厚く、4,000mに及ぶところもあるほどです。氷山、氷床、氷舌、氷塊・・・。南極の大自然を愛でるとき、それはダイナミックで限りなく美しい氷の芸術をあれこれ目撃することに他なりません。まさにそこは氷の桃源郷なのです。
南極の気温…夏は意外に暖かい?
南極といえば氷点下80度など、人間が暮らせないほどの極寒の地を想像する人も多いでしょう。南極は東半球の東南極と西半球の西南極に分けられ、日本でおなじみの昭和基地は東南極に位置しています。昭和基地では、1-2月の夏場は雪が降らない日もあるのですが、それ以外の季節はほぼ通年雪が降り、平均気温が氷点下5度から冬には氷点下20度位になるそうです。氷点下80度を超えたのはもっと内陸部の話です。
南極半島のある西南極では、10月から2月の夏場は平均気温が零度を超え、天気がいい日は5℃から10℃になる日もあるのです。私が行った2月下旬も、予想以上に暖かく、ゾディアッククルーズで昼間パーカーを脱いだり、手袋をはずしたり、少し汗ばむほどだった時がありました。欧米人の男性などは長袖Tシャツ姿になっていたり・・・。ちょっと体感温度が日本人とは違いますが。
天気が悪く吹雪いたりすると、突然氷点下になりますが、天気がいい夏場の昼は本当に南極というイメージからは程遠い暖かさになることが多いので驚きます。
南極半島の先端部に近いアルゼンチンのエスペランサ基地での観測で、かつて2015年の4月になんと17.5℃を記録したことがあるそうです。南極が全て寒いというのは偏見でしたね。
南極の夏は白夜、冬は極夜。オーロラは観られる?
地球上で緯度が高い場所ほど白夜と極夜の現象が起こりやすいのです。南極半島が位置する南極圏は南緯66.33度と緯度が高いエリアです。夏場である9月から3月は日が沈まない白夜となります。半島の北部では白夜にはならなくても、クルーズ中は23時くらいまで明るいことも多いのです。
反対に5月に入ったら、日が短くなります。冬場にあたる7月くらいまでは極夜といい、全く日が昇らない季節となるのです。真っ暗では観光などできませんから、この時期には一切のクルーズは運行していません。
南極でオーロラは観られるのか?という質問ですが、白夜だと明るくてオーロラは観られませんね。暗い夜空にこそ見えるものです。昭和基地で冬場などにはオーロラがよく見えるという話ですが、私たちがクルーズで訪れることはできません。
南極の観測基地
南極の基地として最も有名なのは、南極点にあるアムンセン・スコット基地でしょう。南極点初到達を競ったノルウェイ人のアムンセンとイギリス人のスコット。1956年に二人に敬意を表して建てられたのがこの基地です。その翌年1957年が国際地球観測年としてプロジェクトが開始されました。その後は世界30か国以上が70か所以上の南極観測基地をあちこちに建設。気象や磁気、オーロラ、氷河などについて観測を行っています。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
最高気温記録 °C (°F) | −14.4 (6.1) |
−20.6 (−5.1) |
−26.7 (−16.1) |
−27.8 (−18) |
−25.1 (−13.2) |
−28.8 (−19.8) |
−33.9 (−29) |
−32.8 (−27) |
−29.3 (−20.7) |
−25.1 (−13.2) |
−18.9 (−2) |
−12.3 (9.9) |
平均最高気温 °C (°F) | −26.0 (−14.8) |
−37.9 (−36.2) |
−49.6 (−57.3) |
−53.0 (−63.4) |
−53.6 (−64.5) |
−54.5 (−66.1) |
−55.2 (−67.4) |
−54.9 (−66.8) |
−54.4 (−65.9) |
−48.4 (−55.1) |
−36.2 (−33.2) |
−26.3 (−15.3) |
日平均気温 °C (°F) | −28.4 (−19.1) |
−40.9 (−41.6) |
−53.7 (−64.7) |
−57.8 (−72) |
−58.0 (−72.4) |
−58.9 (−74) |
−59.8 (−75.6) |
−59.7 (−75.5) |
−59.1 (−74.4) |
−51.6 (−60.9) |
−38.2 (−36.8) |
−28.0 (−18.4) |
平均最低気温 °C (°F) | −29.6 (−21.3) |
−43.1 (−45.6) |
−56.8 (−70.2) |
−60.9 (−77.6) |
−61.5 (−78.7) |
−62.8 (−81) |
−63.4 (−82.1) |
−63.2 (−81.8) |
−61.7 (−79.1) |
−54.3 (−65.7) |
−38.2 (−36.8) |
−29.1 (−20.4) |
最低気温記録 °C (°F) | −41.1 (−42) |
−58.9 (−74) |
−71.1 (−96) |
−75.0 (−103) |
−78.3 (−108.9) |
−82.8 (−117) |
−80.6 (−113.1) |
−79.3 (−110.7) |
−79.4 (−110.9) |
−72.0 (−97.6) |
−55.0 (−67) |
−41.1 (−42) |
降水量 mm (inch) | 0.3 (0.012) |
0.6 (0.024) |
0.2 (0.008) |
0.1 (0.004) |
0.2 (0.008) |
0.1 (0.004) |
0.0 (0) |
0.0 (0) |
0.1 (0.004) |
0.1 (0.004) |
0.1 (0.004) |
0.3 (0.012) |
降雪量 cm (inch) | 0.3 (0.12) |
0.5 (0.2) |
– | – | 0.3 (0.12) |
– | – | – | – | – | – | 0.3 (0.12) |
平均降水日数 (≥0.1 mm) | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.0 | 0.2 | 0.1 | 0.0 | 0.0 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.3 |
平均降雪日数 | 22.0 | 19.6 | 13.6 | 11.4 | 17.2 | 17.3 | 18.2 | 17.5 | 11.7 | 16.7 | 16.9 | 20.6 |
平均月間日照時間 | 406.1 | 497.2 | 195.3 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 34.1 | 390.6 | 558.0 | 616.9 |
出典1:Pogoda.ru.net (temperatures, 1981–2010, extremes 1957–present)
出典2:Deutscher Wetterdienst (Precipitation 1957–1988 and Sun 1978–1993),[2] NOAA (snowy days and snowfall data, 1961–1988)
日本の昭和基地は同じく1957年に建てられ、その後みずほ基地やあすか基地も建てられました。
私がクルーズ中に見かけたのはアルゼンチンのブラウン基地とプリマヴェーラ基地の二つ。国旗でどこの国の基地かわかるようになっていました。とりわけプリマヴェーラ基地では、建物の周りの岩場がペンギンのコロニーになっていて、たくさんのペンギンを見ることができたのも印象的でした。
位置情報 | 64°09′21″ S 60°57′19″ W |
国 | アルゼンチン |
標高 | 50 m(160フィート) |
施設 | 本館 ダイニングルーム ヘリポート 診療所 ラジオ放送局 車両フリート 実験室 ワークショップ(機械、大工) 凍結チャンバー 預金 |
南極の歴史
初めて南極大陸で南緯78度まで到達したのはイギリス人のジェームズ・クラーク・ロス。その名にちなんでロス海、ロス島という地名があります。
捕鯨目的で南極に向かう船も増えて、1900年からはいろいろな国が加わってきました。1902年にイギリスのスコットが極地大地を発見。1911年にはノルウェイのアムンセンが南極点に到達しました。
日本人が初めて南極大陸に足を踏み入れたのは、1912年の白瀬中尉が率いる日本南極探検隊でした。その後1957年に昭和基地が建設されたのです。同年には南極点にアムンセン・スコット基地ができたのでした。その後日本人として初めて南極点に到達したのは、1968年のこと、村山正美を隊長とする第9次越冬隊による快挙でした。
南極ってビザが要るの?
南極クルーズに参加する場合、特にビザを取ったりする必要はありません。南極の大使館などは存在しませんので(笑)
でも南極を観光する場合、事前に南極観光保護法に基づいて環境省への届け出が必要になります。この届出を怠ると法律で罰せられることもあるそうです。クルーズツアーを申し込んだ旅行社が、提出に必要な書類を用意してくれるので、指示に従って期日までに出せばOK。
届け出受理のためには1か月程度かかるので、余裕を持って申請することが大切です。クルーズの予約は1年前から開始するケースが一般的なので、同時に動けば十分余裕を持って対応できます。
経由地となるアルゼンチンやチリはともに3か月以内の滞在はビザが不要。パスポートの残存期間がチリは入国時に6か月以上必要で、アルゼンチンは帰国まで必要です。南米に入る際にアメリカ経由になることがほとんどですので、当然アメリカのビザであるESTA登録もお忘れなく。
2022年のベストシーズンにクルーズに行きたいなら、1年前が準備開始のグッドタイミングといえるでしょう。
南極クルーズの持ち物と服装
フライ&クルーズの場合は小型機に乗るため荷物は15㎏という制限があって、クルーズに不要なスーツケースなどは前後泊のホテルに預けていきます。私の場合クルーズ船で5泊するし、初めての南極で勝手がわからず防寒用のインナーから上着までかなり多めに持って行ったので、軽量までは程遠い状態でした。かろうじて重さはセーフでしたが、行ってみるとクルーズ船内でランドリーサービスも役に立つし、着替えをそれほど持っていく必要はなかったと知りました。
また南極クルーズに関しては食事時の服装もカジュアル。おしゃれなドレスなど不要です。皆ゾディアッククルーズで着ていた服装からパーカーやセーターを脱いだ、そのままの服装で食事するのが当たり前という感じでした。結局私は用意した服装の半分が不要だったのです。あくまで機能性重視。最低限で十分でした。これはこれから行く人に強くアドバイスしたいことです。
唯一絶対に忘れてはいけないのがゴアテックスなど防水性のズボン。耳が隠れる毛糸の帽子とスキー用の手袋、靴下なども必要です。ゾディアッククルーズ中必要なゴム長靴とパーカーは用意してくれるので、日本から持参する必要はありません。
ツアー中は防水で軽量のデイパックにカメラなど入れるのがいいでしょう。サングラス必携、カメラについては、部屋で充電できますが、念のため予備のバッテリーを多めに。
保温できる水筒があると、お湯を入れて部屋でお茶を飲んだりできます。また万一病気になった場合、医務室があって治療や薬代も基本かからないのですが、持病の薬などは忘れずに。基礎疾患のある人は、自分が飲んでいる薬の処方箋の英訳のものを持参するといいでしょう。
南極クルーズの種類
南極クルーズの出発点はアルゼンチンのウシュアイアかチリのプンタアレーナスが一般的。その地発着ですべてクルーズのものとフライトで南極のキングジョージ島まで飛んで、そこからクルーズ船に乗るパターン「フライ&クルーズ」のパターンがあります。
クルーズ船に乗船する前夜のウシュアイアやプンタアレーナスのホテル1泊も含めて、クルーズツアーの日数を数えます。例えば「南極半島&サウスシェトランド諸島クルーズ11・12日間」の場合は、1日目 ウシュアイア泊 2日目 乗船日 3・4日目ドレーク海峡を船で渡ります。荒波の中を2泊、南極は遠いのです。 5~9日目 サウスシェトラン諸島と南極半島でクルーズ観光 10・11日目 ドレーク海峡を再度航海してウシュアイアに戻ります。12日目 ウシュアイア着後下船。解散。このクルーズのパターンはウシュアイア発着12日間のツアーでも南極にいるのは計5泊。かなりのロスがありますが、クルーズだけの方が確かにツアー代は安めなのです。
快適さを取るなら「南極フライ&クルーズ 6~11日間」荒れるドレイク海峡を避けて、フライトでひとっ飛びします。往復4泊分のハードな航海がフライトで片道2時間ずつ4時間で済むのです。
船酔いの心配もなくなります。時間も節約になるので、これは個人的にはお勧めです。私の乗ったコースは「フライ&クルーズ南極エクスプレス8日間」ワールドエクスプローラー号と言う新しくて快適な豪華船です。1日目 プンタアレーナス前泊 2日目 フライトでキングジョージ島へ 着後乗船 3~6日目 クルーズ船泊 クルーズ観光 7日目 下船 フライトにてプンタアレーナスへ プンタアレーナス後泊 8日目 解散
プンタアレーナスの高級ホテルが前泊と後泊2泊プレゼントされました。すべてにおいて行き届いたプランなので、せっかく行くならベストプランを‥という方にはお薦めします。
南極クルーズの費用
誰にとっても南極クルーズと言ったら、一生に1度の壮大な旅の計画になるでしょう。地球の果てにはるばる訪れることも大変だし、コスト的にもかなりの額を覚悟しないといけません。
体力的にお勧めの「フライ&クルーズ」の中の「フライ&クルーズ南極エクスプレス8日間」ワールドエクスプローラー号利用の場合、プンタアレーナス発着のツアー代は2名1室の場合ひとり16,995ドル(2,640,853円)
。
これは私の乗ったベランダスイートの場合です。この船では一番安い部屋となります。この上にもインフィニティスイートやスーペリアスイートなどがあり、もっと高めです。11日間のツアーだと同じベランダスイートがひとり26,495ドル(4,117,058円)
船は同じワールドエクスプローラー号でも、往復すべて船利用の場合は、ウシュアイア発着11日間のツアーが13,495ドル(2,096,988円)~となっています。3名1室のトリプル料金はいずれももっと安めです。
もう少し低コストを希望するなら、他の船があります。オーシャン・ダイアモンド号ウシュアイア発着「南極半島&サウスシェトランド諸島11日間」がパーシャルビュールーム2名1室利用の場合1人10,495ドル(1,630,818円)~。
ヘブリディーン・スカイ号のウシュアイア発着クルーズ、「南極半島&サウスシェトランド諸島12日間」の丸窓ツイン利用で1人9,595ドル~1,490,967円)。
あとは出発に近付いてキャンセルが出たりして安い料金が出るケースもあり、そういうものを探すという手もあります。ただし南極クルーズは準備が大変なので、あまり間際だと間に合わないケースもあります。クルーズツアーを組んでいる会社に相談してみるのが賢明です。
もう一歩足を伸ばして立ち寄りたいエリア
チリ・プンタアレーナス
チリは細長い国です。首都サンチャゴから、チリ最南端の都市プンタアレーナスまでは2,400㎞もあり、国内線のフライトで3時間20分もかかります。人口が12万人ほどの都市としては世界で最南端に位置しているそうです。
南極クルーズの拠点となるのがこの町。ここからクルーズ船に乗るケースと、フライトで南極の島に飛んでから船に乗るケースがありますが、クルーズツアーで泊まるのは町中のホテルとなります。マゼラン海峡に面した小さな町にはマゼランの彫像などがあるほか、それほど見どころはなく、数日時間を取れるなら、ぜひ足を延ばしたいのがパイネ国立公園です。
ラス・トーレス・デル・パイネはパイネ国立公園最大の見どころである3つの奇峰です。ミルキーブルーの湖と紺碧の空の優しい大自然の中で牙をむくように激しい山々の頂の風景。迫力あふれる風景は印象的です。そして草原に群れるグアナコの愛らしさに癒されます。
居心地のいいロッジに滞在して、ハイキングやトレッキングを楽しんだり、早朝ピューマを探してサファリをしたり、パイネ国立公園での楽しみは尽きません。せっかくパタゴニア地方に足を延ばすならこの地の観光を外すのはもったいないでしょう。最初から、クルーズの後に追加手配を入れておくことがおすすめなのです。
アクセス | チリのプエルトナタレスから陸路で約2時間半。プンタアレーナスからは約4時間 |
面積 | 約1,630㎢(大阪府よりやや小さい) |
主な見どころ | トーレス・デル・パイネ、グレイ湖とグレイ氷河、ペオエ湖、サルトグランデの滝、パイネ・グランデ山 |
アルゼンチン・ウシュアイア
同じくアルゼンチン側の最南端の町ウシュアイア。南極クルーズはチリのプンタアレーナスと並んで、ここウシュアイアから出発する船も多い、南極へのゲートウェイシティなのです。南極大陸最南端として、最果ての灯台を見にビーグル水道クルーズに参加したり、世界の果て号という小さな蒸気機関車に乗ってみたり、ウシュアイアの町での楽しみはいろいろ。
中でも忘れてはいけないのがシーフードグルメでしょう。セントージャと呼ばれるタラバガニはこの地の名産です。丸ごと塩茹でにしてレモンをかけてさっぱりと食べるのが日本人には一番ですが、他にもサラダに盛り付けてあったり、クリームスープにたっぷりのカニの身を入れてあったり、その贅沢な使い方にびっくり。そして嬉しくなるはずです。
アルゼンチンはアサードと呼ばれる牛肉の炭火焼き料理でも有名です。前菜にカニ、メインにビーフなんてこの世のグルメパラダイスですね!!
南極クルーズの帰りにちょっとウシュアイアの町に延泊して、アルゼンチンのグルメと観光もおまけで楽しむのがおすすめです。
国 | アルゼンチン |
州 | ディエラ・デル・フエゴ州 |
人口 | 70,000人(2014年現在) |
面積 | 23 km² |
まとめ
南極クルーズの話や写真、いかがでしたか?この氷の桃源郷、魅惑的な動物たち、あなたも見たくなったのでは?詳細情報も参考に、意外にハードルが高くない南極クルーズあなたもぜひトライしてください。インパクトのある一生の思い出ができるはずです。